interview
2026/2/6 掲載
ジャジャーン!自慢プロダクト/12
普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ! ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回登場するのは、矢巾町に会社を構える北日本製袋株式会社の「COME SACK」(カムサック)。樹脂製の米袋をバッグに仕立てるというユニークなチャレンジは、一体どのようにして始まったのでしょう。

元は農業資材だったものが、ファッションの世界で認められる。そんな痛快なストーリーとは裏腹に、現場では米袋の格好良さにすぐにピンと来なくて戸惑うこともあったとか。そのあたりのお話を、商品開発の渦中にいた同社の坊屋鋪孝司(ぼうやしき・たかし)さんと白藤綾加さんに伺いました。

とても有名なブランドと次々コラボしている商品が、矢巾町から生まれていることに驚きました。

おかげさまで、ファッションブランドではビームスジャパンやトゥーユナイテッドアローズなどがCOME SACK(カムサック)コラボ製品を取り扱って下さっています。他にもフジロックフェスティバルのフジロックの森公式グッズを作ったり、地元でもZOOMOや岩手ビッグブルズに採用していただいたりしました。

ビッグネームばかりで本当にすごいです! そもそもどうしてお米の袋でバッグを作ろうと思ったのですか?

バッグの素材になるお米の樹脂袋を織る機械は、日本ではもうここにしかないんです。弊社でも多い時は1年で80万枚くらい米袋を作っていましたが、代替品や輸入物に押されて需要が減り、事業を撤退してしまいました。でも国内で樹脂袋が作れなくなって本当にいいんだろうかと考えていたところに、ご縁のあったデザイナーさんから「バッグを作りましょう」と提案いただきました。

以前から冗談で「カバンにしたら?」なんて言ってはいたんです。でもずっと縫製をしてきた私たちにはただの米袋にしか見えないから、いざ作るとなると「本当に大丈夫?」と不安でした。だけど会社が決めたことだし「まずはやってみよう!」となって。


なるほど、機械があるなら作ろうよと! 米袋でバッグ、うまくいきましたか?

米袋の生地は、積み上げても滑らないようにガサガサとしていて手触りが良くないんです。試作品も初めはお世辞にも上出来とは言えない状態でしたね。そこで糸の本数を減らして生地が綺麗に編み上がるよう必死に機械を調整して、なんとか今のような滑らかな状態に仕上げました。

縫製も、米袋の頃は多少のことは気にせずガーッと大量に縫うことが求められていました。だけどこれはバッグですから、見た目良く真っすぐ縫わないといけません。かなり戸惑いながらも丁寧にチクチク仕上げてみたら「あれ? 意外と形になったんじゃない?」と。

たしかにこのバッグは手触りがいいです。ここは米袋そのままではなかったんですね。ところでバッグのラインナップも豊富ですが。

形はデザイナーさんの案の他に、私たちの試作品から採用されたものもあります。周りの人達から「もっと小さいサイズがほしい」という要望があってミニトートが生まれたり。逆に、作るのが簡単で「キャンプの薪運びなんかに最高!」と思った自信作が全然売れなかったりもしましたね。

関東の人から「満員電車で口が開いたバッグは不安」という声をいただいて、ファスナー付きが生まれました。米袋用のゴツいファスナーの在庫が大量にあるので、そのまま使われています。織り機自体もデザイナーさんはかっこいいと言いますし、どれもあまりピンと来なかった我々は「それってファッション業界の人には良く見えるんだ…!」と勉強することばかりでした。


こうして見るとたしかに洒落たパーツにしか見えないです! そして「元は米袋だった」って知ることで、商品の価値や愛着が増すのが面白いです。

そうなんです。サステナブルファッションの展示会に出た時も、農業のものなんて出していいの?って思ってたんですね。他の出店者さんに「100均でも売ってそう」って言われてショックを受けたりして。でも蓋を開けてみれば物珍しさも手伝って、お客さんと喋り通しで喉がカラカラになるくらい好評だったんです。商品にストーリーがあるから、そこが響くのかなあと思いました。

今では社員もみんなCOME SACKを持っています。私は自分用にサイズを調整したりファスナーを追加したりして使ってます。営業に行く人も持ち歩いていますね。米を入れていたものなので丈夫だし、バッグ自体がものすごく軽いところも気に入っています。

旧来のポリプロピレン製だけでなく、新しい素材にもチャレンジしていると聞きました。

はい、米を原料にしたライスレジンの糸を使ったシリーズです。触っていただくとわかるのですが、とても柔らかい素材でバッグにしても風合いや使い心地が更にいいんです。弊社では新事業で環境にやさしいこの素材を扱っていて、レジ袋を矢巾町のスーパーマーケットに卸しています。お客さんが従来のレジ袋と選べる仕組みです。

古い資材だけじゃなく、新事業とも連携できているのがいいなと思いました。

商品名の「COME」は、もちろんコメから来ていますが、英語で「来る」という意味のカムから、幸せやお客様がやってくるようにという願いが込められています。事業の軸は大きく変化しましたが、長らく会社を支えてきた米袋を使った商品が話題になることで、私たちの存在を知ってもらったり、新しい縁を呼んでくれたりしたらうれしいと思っています。

畑違いのチャレンジに不安を抱えながら手探りで奮闘した開発秘話を、ユーモアを交えて楽しく話してくれたお二人。僕自身、取材を通して、彼らのキャラクターがそのまま反映されたような誠実さと明るさのあるCOME SACKのファンになりました。あの風格のある立派な機械が、いつまでも現役で働き続けられますように!
(取材時期:2025年7月)
北日本製袋に興味を持った学生さんにメッセージ!
COME SACKは役目を失いかけたサーキュラー織り機の再活用を目指してスタートしました。米麦用樹脂袋は土嚢袋と同じ作りなので、この機械があれば有事の際の備えにもなります。
農業用の袋を作っていた織り機で、ファッションバッグ作りに挑戦し、ありがたいことに有名ブランドとのコラボも実現しました。現在では食用に適さないお米を原料の一部に使用したサステナブルなバッグも開発しました。
同じ機械、同じ人材でも少し目先を変えて、他のチャレンジをすることで大きな可能性を見出すことができるのだと感じています。
これからも様々なチャレンジをしていきたいと思います。
■北日本製袋株式会社
米穀用麻袋工場として1966年創立。以来、地域の農業に寄り添いながら、米麦容器事業、農業資材事業、米穀事業を展開してきました。現在では既存事業の他、COME SACKやお米由来のバイオマスプラスチックのライスレジン製品の普及にも取り組んでいます。
■企業サイト
http://kitanihonseitai.co.jp/
(COME SACK 商品ページ)
https://comesack.com/





