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interview

ジャジャーン!自慢プロダクト/02

鉄の街の技術が生んだ電気に頼らないストーブ

普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。みんなが知っているアレも登場するかもしれませんよ〜。

「いつか薪ストーブのある生活をしてみたい」。そんな風に思ったことはありませんか? 今回の主役は、釜石市でつくられているストーブ「CRAFTMAN」。北海道から沖縄まで、全国の家庭や飲食店などで活躍しています。その製品開発の背景には、「近代製鉄発祥の地」と言われる釜石ならではの物語がありました。

ロボットのような形も愛らしいCRAFTMAN。薪・ペレットストーブは海外製が多く、自社で製造から販売まで一貫して行っている会社は日本では珍しいそう

石村工業さんは1959年創業なんですね。最初からストーブを製造していたのですか?

いいえ。当初は製鉄会社の設備修理を行う下請け会社としてスタートしました。創業当時は製鉄業の最盛期で、釜石は人口9万人を超える岩手第二の都市だったんですよ。

ひとつの転機は1989年でしょうか? 製鉄所の高炉が停止されましたね。

はい。仕事がゼロになったわけです。

そこで私の父である現・会長が、「自分たちで仕事をつくろう」と自社製品の開発を試行錯誤し始めたと聞いています。紆余曲折を経て、2002年頃にストーブが開発されました。

ガスバーナーのように燃える「ガス化燃焼」が特徴。完全燃焼に近いため、煙が少なく、街中でも安心して使うことができます

長い道のりでしたね。

薪ストーブの開発は、産学官連携のプロジェクトとして始まったものだったのですが、当社が事業として製造から販売までを続けてきました。

かつて設備修理を行っていた技術が活かされているのでしょうか?

僕が生まれる前の話なので、そこは会長に聞いてみましょう。

設備修理には、厚い鉄板を加工して、溶接したり、曲げたりする技術が必要なんです。鉄板でつくるCRAFTMANは、その技術を応用して、設計・開発しました。

図面に従って切り分けられたパーツを溶接する様子。段差や隙間は職人さんの感覚で調整していきます
仮溶接した後、隙間が無いように仕上げる「全周溶接」が製造の肝だそう

CRAFTMANにはどんな特徴がありますか?

薪と、木を粉砕・圧縮してチップ状にしたペレットを兼用できるタイプが人気なのですが、電気を使わずに連続燃焼できるのが自慢です。

ペレットストーブって、電気が必要なんですか?

ペレットを燃焼部に送り出すスクリューコンベアや、風を送るファンを回すために電気が必要となる製品が多いんです。 

せっかく木を燃やすのに、電気を使っていたらもったいないよねという発想から開発が始まりました。

自社で試作からできるのは非常に強みでしたね。

どうやったら自然の力で連続してペレットを供給して燃焼させられるか。この構造を考えるのが一番苦労しました。

真鍮の空気調整口を動かすことで火力を調整することができます。調整口の左に見えるのは余分な灰をストックする「灰受けボックス」。パンの温め直しなどができます

東日本大震災時に、このストーブが活躍したと聞きました。

停電になっても暖が取れて煮炊きができた。いざとなれば瓦礫の木も燃やせますからね。電気を使わないということにこだわって本当に良かったと思っています。

「湯沸かし部」や「灰受けボックス」など使い勝手のいい機能が備わっているんですよね?

灰受けボックスは、私がこんな機能があるといいなと思って付けたものなんですが、湯沸わかし部は最初ついていなかったんですよ。

展示会などでお客さまからいろんな要望をいただいてね。自社で製造しているので、意見を取り入れながら改善できるのも当社の強みですね。

ダッチオーブンを使用するとグリルやオーブン料理ができます

つくりながらいろんな提案が製作を担当する職人からもあったりするので、外観はあまり変わらないんですが、中身は進化しているんですよ。

創意工夫を楽しまれている職人さんが多いんですね!

「自分たちでものをつくれるのがいい」という声を職人からは聞きますね。オーダー製品も多いので、改造したり新規設計することもあって、同じものを繰り返しつくるだけではないんですよ。日々変わる仕事というのは魅力のようです。

重量が300キロを超える製品はクレーンを使って作業します。

「机上ではものはできないので、つくる人の意見を聞くことは大事ですね」と石村社長。下請けから自分たちでつくる会社へ変貌を遂げた石村工業。柔軟に、考えるものづくりができる社風があり、だからこそ実用的で支持される製品が生まれているのだと感じました。現在は「1年を通して活躍できる製品を開発したい」と構想を練っているところだそうですよ。今後の展開が楽しみです!

石村工業に興味をもった学生さんにメッセージ!

現在新卒採用は行っていませんが、ものづくりに興味をもってもらえたらうれしいです。どこかで積んだ経験をいずれ岩手のために使いたいと思ってもらえたら幸いですし、ゆくゆくは営業職を募集できたらと考えていますので、その際は商品の魅力を一緒に発信するなど、岩手のものづくりを支える一員になってもらえたらと思います。

■石村工業株式会社

創業以来の鉄工技術を活かし、ペレット・薪兼用ストーブ「CRAFTMAN」、業務用の大型薪ストーブ「ゴロン太」、塩蔵機能を備え三陸ワカメ産業を支える攪拌装置「しおまる」のほか、水門、門扉など大型構造物も製造。先日は大槌町に新設されたバスケットコートに設置する「バスケットボール型のベンチ」を製作しました。

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