深津さんは2018年に北上市の地域おこし協力隊に着任し、任期満了後に起業されたそうですね。これまでの経緯を教えてください。

私は静岡県の出身で、高校卒業後は日本女子体育大学に進学しました。大学ではラクロス部に入り、22歳以下の日本代表に選出されたこともあります。夢中でラクロスに打ち込む一方、就職活動は上手くいかず、卒業から一年ほど経ってようやく人材会社の営業として働き始めました。

それはどんな仕事だったんですか？

企業に対する新卒採用支援がメインで、学生と企業のマッチングなどを行っていました。3年半ほど勤めたのですが、自分には合わなかったようで心身のバランスを崩してしまったんです。自分の生き方を見つめ直し、「好きなことで生きていこう」と決めて退職することにしました。

そうだったんですね。それからすぐに、地域おこし協力隊に申し込んだのですか？

まずは、自分が何をやって生きていきたいのかを知るために、いろんなことにチャレンジしました。その中の一つが地域おこし協力隊だったんです。私の地元はシャッター街が増えていて、以前から地域の活性化に関心がありました。

着任前に岩手へ来たことはありましたか？

岩手どころか、雪国すら初めてでした。着任して2年目までは雪が少なかったのですが、3年目は大雪で慣れない雪かきに苦労しました。

協力隊の活動としては、雪あかりや自転車のツーリングイベントなどを開かれたそうですね。

私のミッションが、スポーツとアウトドアを通して北上市のファンを増やすというものでした。湧き水で暮らしているお宅や、かつて修験者が住んでいた家とか、穴場スポットを自転車で巡りながら北上の魅力を伝えていきました。

協力隊の任期を終えて「北上巣箱」を設立されましたが、以前から起業を考えていたのでしょうか？

自分で考えてトライして、その結果を踏まえて修正するやり方が好きなので、起業前提で協力隊になりました。協力隊の活動をする中で、ガイドの仕事が自分に合っていると感じ、協力隊の3年目を迎えた頃から「北上巣箱」の立ち上げ準備を始めました。

「北上巣箱」の名前には、どんな思いが込められているのでしょうか？

私は北上に来て、自然の豊かさや地域の方の温かさに何度も心を動かされ、癒やされてきました。今こうして元気いっぱいに活動できるのも、北上のおかげだと感謝しています。協力隊卒業を控えて、起業の内容を考えた時に、私自身が心動かされた北上の豊かな自然や地域の方との触れ合いを、ツアーを通してたくさんの方と一緒に感じていきたい、感じてもらいたいと思いました。北上の人や自然と触れ合う時間を通して、日々をがんばる方々に寄り添うような、そんな場になりたいという思いを込めて「北上巣箱」という屋号にしました。

現在は、どんな事業を行っているのですか？

北上の豊かな自然や地域の方と触れ合うツアーを行っています。秋に古民家の囲炉裏で郷土料理「芋の子汁」を食べるものや、人気の「滝ツアー」では沢歩きや滝の水を全身に浴びるなど、大自然を満喫できる内容になっています。

滝を浴びるなんて楽しそうですね！休日はどんなことをして過ごしていますか？

実は休日も、自分だけのオリジナルツアーをやっています（笑）。自転車でお気に入りのスポットへ行き、のんびり景色を眺めながら本を読んで、最後は大好きなアイスクリームを食べて帰るコースです。

なんて素敵なコース！休日も北上を楽しんでいるんですね。最後に、これからの目標を教えてください。

自営業は大変な面もありますが、3年目を迎えた今、自分らしい仕事にたどり着いたと実感しています。北上には自然や食、地域の人などいろんな魅力がたっぷり詰まっています。これからも、ツアーに参加してくれた人たちに非日常の中で思う存分、羽を伸ばしてもらい、癒される時間と場所を提供していきたいです。