磐井AI株式会社（以下、磐井AI）は、一関工業高等専門学校（以下、一関高専）の専攻科の学生３名と教授によって設立された会社。代表取締役 CEOを菊地佑太さん、取締役 COOを石井聖名さん、取締役 CTOを佐藤汰樹さんが務め、指導を行っている鈴木明宏教授が取締役 会長を務めています。

事業として取り組んでいるのは、AIを用いた技術で歩行を解析し、認知症の早期発見や予防を行うシステム「D-Walk」の開発。現在は介護施設の協力を得ながら、歩行データを収集し、将来のサービス化を目指しています。

磐井AIの創業のきっかけは、2022年に開催された全国高等専門学校ディープラーニングコンテスト2022（DCON2022）。

DCONは、高等専門学校生が制作した作品の「事業性」を企業評価額で競うコンテストで、認知症についての研究を行っている鈴木教授の研究室に所属していた石井さんと、別の研究室でAIに関する研究をしていた菊地さんと佐藤さんがチームを組み、DCONに出場。

そこで「D-Walk」を出展し、最優秀賞を受賞すると、賞金として受け取った賞金100万円を資本金として、磐井AIを設立しました。

「先輩起業家の方やベンチャーキャピタルの方など、DCONの審査員の方々から高い評価をいただいたことが、起業への自信に繋がりました。起業後もアドバイスやレクチャーなど、DCONのメンターの方々から事業への継続的なサポートも受けています」（石井さん）

磐井AIが開発しているD-Walkは、加速度センサーを搭載したデバイスとスマートフォンのアプリを使って、歩行を測定。AI技術を活用した解析によって、認知症の早期発見や予防を実現するシステムです。具体的にどうやってAIで認知症の早期発見や予防を行うのでしょうか？

「認知症患者の方には、特有のすり足歩行や歩行時のふらつきなどがあることがわかっています。そこで、D-Walkでは歩行の状況をモニタリングし、AIによって認知症の疑いがあるかどうかを解析することで、認知症を早期に発見することができます。また、特に重要な認知症の予防に向けて、どんな歩行習慣をつくれるといいか、そのアドバイスも行えるような製品にしていきたいと思っています」（鈴木さん）

現在は、将来のサービス化に向けて、介護施設の入居者を対象にした歩行の計測を行っている磐井AI。データ収集のために使用するソフトウェアやアプリの開発も自分たちで行っています。

「歩行データの収集のために介護施設を訪れると『早く製品化してほしいです』というお話を多くいただくので、とても励みになっています。認知症の予防や早期発見に貢献して、高齢者の方たちがより長く健康に過ごすために、期待に応えられるようなサービスをつくっていきたいです」（佐藤さん）

菊地さんと石井さん、佐藤さんは2024年3月で一関高専を卒業予定。卒業後は進学や就職など、それぞれが別々の道を歩みながら、磐井AIの事業にも携わり続けていきます。

「今は創業したばかりの時期で、サービス化を目指しているタイミングですが、重要なのはサービスを提供した後のフェーズだと思っています。しっかり稼ぐことで、ビジネスとして成り立たせ、このシステムを社会実装していくための取り組みを続けていきたいなと思っています」（菊地さん）

D-Walkのサービス提供は、2024年度中を予定しているそうです。学生として研究や勉強に励みながら、起業し、テクノロジーを活用した新たなサービスの社会実装を目指す磐井AIのみなさんの今後がとても楽しみですね！

磐井AIのみなさんから学生さんへメッセージ

多くの高校生は，将来の進路に悩む時期にいると思います。この記事を読んで、「地元起業」という選択肢が、皆さんの中でひとつの道標になってくれていたら幸いです。

■磐井AI株式会社
一関工業高等専門学校の生徒と先生によって、立ち上げられたベンチャー企業。DCON2022で最優秀賞を受賞した、認知症早期発見・予防システム「D-Walk」の開発を行っています。

■企業サイト
https://iwai-ai.com/