みんなの想職活動

interview

2024/3/11 掲載

STARTUPアドベンチャー/03

人とロボットが共生する新しい未来を創っていく

「起業」という旗印のもとに大海に漕ぎ出したベンチャー企業やスタートアップ企業をご紹介!今回登場するのは、滝沢市にある滝沢ロボティクス合同会社です。ロボット開発を通して、農業や土木、建築分野など、さまざまな産業の課題解決に取り組むユニークな会社です。

初めてロボットを作ったのは、高校生の時。ものづくりが好きな3人の少年が部活で出会い、ロボット競技会に出場するため、自律型ロボットを作ったのが始まりでした。

「新しい技術を自分で考えて、それがうまく動いた時が最高に楽しい!」

ロボット作りの楽しさに目覚めた少年の1人は、大学進学とともに、生まれ育った兵庫県から縁もゆかりもない岩手県へ。「都会と比べてロボットに触れる機会が少ない地域なら、開拓の余地が無限にある」と考えたからです。

その少年は、田尻隼人(たじり・はやと)さん(26)。岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科で学ぶ現役の大学院生であり、滝沢ロボティクス合同会社の社長でもあります。

小さい頃から「ものづくりが好きだった」という社長の田尻隼人さん

田尻さんは大学1年の時から、ものづくりをする人材を育てることがSDGs(持続可能な開発目標)につながると気づき、NPO法人を立ち上げ、子ども向けのロボット教室を開催。その傍ら、地域に役立つロボット作りを通して、子どもたちが働きたいと思える社会を思い描くようになりました。

最初に注目したのは、農業。「高齢化や担い手不足といった課題を解決するために、自走できる搬送ロボットを作れないかと考えたんです」。

このロボット開発によって超スマート社会の実現を構想した田尻さんは、『大学SDGs Action! AWARDS2020』で発表し、グランプリを受賞。賞金を元手に、大学3年になった2020年5月に起業し、大学や高校時代の友人たちとロボット開発を始めました。

遊び心のある滝沢ロボティクスのロゴマーク。
ロボット製造のための工具や材料がたくさん並ぶオフィス

滝沢ロボティクスが手がけるプロダクトには、屋外用搬送ロボット、教育用ロボット、パソコン用のパームレストなどがありますが、開発のメインは起業当初から手がけている屋外用搬送ロボット。

このロボットは、遠隔操作・自律走行・人間追尾などの機能を持ち、最大積載量は200kg。農園で使うタイプは、収穫する人の後ろを自動走行でついて行き、収穫した農作物を目的地まで自動搬送。途中で障害物に出くわしても素早く検知し、回避しながら安全に運ぶことができる賢いロボットです。

人間の後ろを追尾している様子。果樹園での収穫などを想定して開発されたロボット 

こうした機能をベースに、現在は、土木や建築分野などにも領域を広げ、さまざまなシーンで活用できるロボットを開発中。狭くて人間が入れない水路トンネルの点検作業や建築資材の運搬など、目的に合わせてカスタマイズし、現場の課題解決に役立つロボットをつくっています。

狭い農業用水路トンネルの中を自動走行するロボット。トンネル内の点検作業などに利用できます 

「いろんな人の話を聞いたり、情報収集をする中で、ヒントをもらうことが多いですね。例えば、雪の多い岩手なら、除雪機能をつけた無人ロボットがあれば、人手が足りない地域でも除雪がラクにできます。こんなロボットがあったら役立つかも、という思いつきが開発の始まり」と、田尻さん。

こうしたアイデアは、毎週水曜日に行っている定例ミーティングで話し合うことが多いのだそう。面白い開発ソースが出ると「やってみようか!」と、部活のノリですぐさま行動に移せるのも学生ベンチャーならではの強みだといいます。

このように小さいながらも、ロボット開発を通して社会のさまざまな課題解決に取り組んでいる、滝沢ロボティクス。少子高齢化や人口減少が加速する中、ロボットの果たす役割はますます重要視されていくはずです。そんな今、田尻さんは会社の未来をどう思い描いているのでしょう。

「まずは滝沢に自分たちが作ったロボットをどんどん増やし、それを全国に広げていきたいですね。技術開発にも力を入れて、どこにも負けない技術で新しいことにチャレンジしていきたいです」。

いつかは宇宙分野の領域にも…という大きな夢を描く田尻さん。滝沢ロボティクスが作ったロボットたちが、まちの至る所で走り回り、人と共生する未来もそう遠くはないかもしれません。

(取材時期:2023年11月)

田尻さんから学生にメッセージ!

何事もまず、チャレンジしてみることが大事だと思います。起業して失敗したらどうしようと考える人も多いと思うのですが、そもそもお金も持っていない学生には失うものが少ない。むしろ社会人が会社を辞めて起業するほうが、これまでの収入がなくなるなど、リスクは大きいと思います。ですから、やりたいことがあったら、まずやってみる! そのために自分が得意なことをどんどん増やしていくといいと思いますね。

■滝沢ロボティクス合同会社
社会課題を解決する産業ロボットの開発・販売を中心に、ホビー用ロボットのパーツ&キットやパソコン用パームレスの販売、映像・ウェブ制作などを手がけています。そのほか、小中学生を対象としたロボット教室「Robodemy(ロボデミー)」の開催を通して、IT人材の育成にも力を注いでいます。起業家を支援する「岩手イノベーションベース」が運営する学生コミュニティ「IIB Lab」の会員。

※岩手イノベーションベース
イノベーションを起こす人材を発掘し支援するために組織され、若い起業家が集まり、自分の夢に向かって切磋琢磨できる場。県内のメディアや金融、行政、そして国内最先端の技術を有する会社などが起業家の成長を支援しています。
https://iibase.jp/

▶︎企業URL
https://takizawa-robotics.com/