interview
2026/3/9 掲載
ジャジャーン!自慢プロダクト/13
普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回登場するのは、デサントアパレル株式会社水沢工場の「水沢ダウン」。製品開発課・課長の及川主計(おいかわ・かずさ)さんにお話を聞きました。
スポーツウェアの製造・販売を行うデサント株式会社のグループ会社として、高機能・高品質なスポーツウェアの開発・生産を手がけるデサントアパレル株式会社。
その工場のひとつ、水沢工場が岩手県奥州市にあります。
水沢工場で作られる製品の中でも、代表的なのが「水沢ダウン」。その品質や性能の高さから世界的な人気を誇っています。
今回は、水沢ダウンが生まれた背景や、その特徴について話を聞きました。


まずは、水沢ダウンの特徴を教えてください。

一番の特徴は、水に強いことです。一般的なダウンジャケットは、羽毛の偏りを防ぐために、羽毛が詰められた生地をミシンで縫い、ダウンブロック(ダウン全体に段々に入っているミシン目)をつくっています。
その際にできる縫い目から雨や雪などの水が染み込んでしまうという弱点があるんですが、そうした課題を克服したダウンをつくろうという考えから生まれた製品が、水沢ダウンなんです。

具体的には、どんな工夫がされているのでしょうか?

ダウンを区切るステッチをなくすために、縫製ではなく特殊な熱圧着加工で縫い目のないダウンブロックを形成しています。さらに、すべての縫い目に防水のシームテープ加工を施し、水が染み込まない構造にしているんです。
一方で、防水性を高めることで課題になるのが、内部が蒸れやすくなることと、熱がこもりやすくなること。
そこで水沢ダウンは、内部の換気を促すために、前立て部分にメッシュを仕込み、内部にこもった不快な熱や湿気を外へ逃がすことができる仕様にしています。


もともと、どのような経緯で開発が始まったのでしょうか?

きっかけは、2010年バンクーバーオリンピック向けのウェア開発でした。当時、デサントが日本選手団にウェアを提供することになっていて、企画の初期段階で現地の気候を調べたところ、雨や湿気が多いという特徴が分かりました。そこで、「水に強いダウンをつくれないか」という発想が生まれたんです。
当時から水沢工場には、国内では希少なダウンウェアの一貫生産が可能な設備があったことと、過去にスキーウェアや騎手用ジョッキーベスト、消防防火服など、難易度の高い技術を必要とする製品を数多く生産していた実績があったので、その設備や技術を生かしたいという考えと、バンクーバーの気候条件が重なり、開発がスタートしました。

とても機能性が高いダウンなので、製造も難しそうですね。

水沢ダウンは、163の裁断パーツと90の副資材を使い、50人の職人が完成までの280の工程に関わり、一着を製造しています。生産工程の多くは、職人の手作業によって行われているんです。
複雑なつくりや特徴的な生地、季節や室温によって変化する繊細な作業も多くあるんですが、50年以上製造を続けてきた水沢工場のものづくりの経験と熟練の技があるからこそ、高い品質と機能を兼ね備えた製品を実現することができています。


開発・生産において大切にしていることはなんですか?

水沢ダウンには、毎年同じ形で展開しているモデルがあります。「アンカー」と「マウンテニア」という2つのモデルで、細かなマイナーチェンジはしていますが、基本となる形は毎年変えていないんです。
最近のトレンドでは、ボリュームのあるシルエットが主流になっているので、その視点で見ると、水沢ダウンは少し細身に感じられるかもしれません。
しかしそれは、流行に左右されることなく、機能を最優先に考える姿勢を変えずに、販売当初からのモデルを継続してきた結果でもあります。そこに表れているのが、水沢ダウンのこだわりや特徴です。

今後の展望があれば教えてください。

今年、水沢工場は建て替えを行いました。日本で流通している縫製品のうち、国内生産のものは全体の1.6%ほどと言われ、海外生産が主流になっているなかで、国内の縫製工場に30億円規模の投資を行うという判断は、決して当たり前のものではありません。
それでも、やると決めた以上は最高の設備と最高の空間をつくる。その決断のもと、水沢工場に働きやすく、ものづくりにしっかり向き合える環境が整えられました。
一方で、最終的に価値を生み出すのは人です。水沢工場で長年積み重ねてきた職人の技術や経験を土台に、これからも水沢、奥州といった地域とともに、水沢工場らしいものづくりを続けていきたいと思っています。

寒さや水に対応する機能を最優先に考え、作り続けられてきた水沢ダウン。手に取ったときには、ぜひその着心地とともに、こうしたものづくりの現場にも思いを巡らせてみてください。
(取材時期:2025年12月)
デサントアパレルに興味を持った学生さんにメッセージ!
縫製業界は、斜陽産業のひとつとも言われ、やりがいがある一方で厳しい現状も少なくありません。さらに、拠点が地方や海外にあるケースも多く、「やってみたい」と思っても地元を離れなければならないこともあります。
もしデサントの工場に少しでも興味が湧いたら、せっかくの地元企業ですので、「自分がここで働いたらどうだろう?」と、ぜひ一度想像してみてください。「悪くないかも」と思えたなら、まずは見学に訪れてみませんか?一緒に、世界トップレベルの商品づくりに挑戦していきましょう!

■デサントアパレル株式会社水沢工場
スポーツウェアブランド「デサント」の製品の開発・生産を行う、デサントアパレル株式会社。水沢工場では、デサントの代表商品である「水沢ダウン」の生産を行っているほか、工場独自のアトリエも備え、アイデアを実際の商品に具現化するために、パターン(型紙)の設計やサンプル作製も行っています。
■企業サイト
https://www.descente.co.jp/jp/
(https://www.descente.co.jp/jp/value/manufacturing/mizusawa/)





