interview
2024/10/31 掲載
こんな仕事があるのか岩手/12
「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。今回紹介するのは「いわて花巻空港」のターミナルビルを運営する会社の仕事。多岐にわたる空港運営の仕事をのぞいてきました。
「空港で働く」と聞いた時、どんな仕事を思い浮かべるでしょうか。おそらく、パイロットや客室乗務員などを真っ先に思い浮かべる人が多いと思います。
空港には、貨物の搭載や航空機の運航を支援するグランドハンドリング、飛行機の点検整備、手荷物の保安検査など、さまざまな職種があります。
今回ご紹介するのは、空港におけるターミナルビルの施設管理を行うお仕事。岩手県花巻市にある「いわて花巻空港」のターミナルビルを運営する、岩手県空港ターミナルビル株式会社に取材しました。
空港には、チェックインカウンターやショップ、航空会社や空港関連企業の事務所など、さまざまな施設や店舗が入居しています。
岩手県空港ターミナルビルは、大きくいうと不動産の立ち位置で、各テナントの賃貸業や建物の管理業を行っています。主な業務内容は、総務、施設運営、総合案内、売店、各イベント対応と幅広く、空港を総合的に運営する「総合職」とも呼ばれています。これらの業務を16名の社員で分担し対応しています。
総務課で入社4年目の中村美仁(なかむら・みさと)さん(31)は、テナント料の管理をはじめとした経理関係の業務をメインに行いながら、案内カウンターでバス乗車券の販売や観光案内など、接客業務を行うこともあるといいます。
「さまざまな業務をこなすので大変ですが、気軽に相談しやすい職場のため、先輩に助けてもらいながら日々業務に取り組んでいます」と、中村さんは笑顔で話します。
ご自身も旅行が好きだという中村さん。その中で、人々の出会いや別れといった、さまざまなドラマが生まれる空港という空間が好きになったのも、入社のきっかけになったのだそうです。
「ビジネスや観光で使うのはもちろん、人生の節目に空港を利用されるお客様もいらっしゃいます。涙を流しながら抱き合って再会を喜ぶ場面に立ち会えた時、この仕事をやっていて良かったなと思います」
「施設内の巡回を行い、建物に不備がないか毎日チェックしています」と話すのは、業務課の鎌田真克(かまだ・まさかつ)さん(41)。
鎌田さんは1日の業務の中で数回、施設内を巡回し、設備や防犯カメラの点検などを行っています。テナントや搭乗通路、給排水設備や機械室、天井裏から地下までくまなく巡回するため、1日2万歩以上(!)歩くこともあるのだとか。
建物のちょっとした不備であれば自ら補修したり、外部の手が必要な場合は業者に頼む手配を行ったりと、状況に合わせて適宜対応しています。
「壁にひび割れがいつ入ったのかとか、エアコンからわずかでも壊れているような音がすれば即対応するなど、毎日見回りを行う中でささいな変化を見逃さないようにしています」
空港ターミナルには、野鳥や虫が迷い込んでくることもあります。
そんな時は、鎌田さんの出番。館内に野鳥や虫が出たと連絡が入ったら、虫取り網を持って、現場まで走って駆けつけるのだといいます。
「お客様にもテナント側にも、安心して空港を利用してもらいたいので」と微笑む鎌田さんは、とても頼もしくみえます。
この仕事に必要なことは?と聞くと「広く見る目だと思います」と答える鎌田さん。
鎌田さんは以前、総務課やイベント担当の部署にいた時期がありました。他部署での経験の積み重ねによって、仕事の全体像が見えるようになり、視野を広くして業務を行えるようになったのだといいます。
「さまざまな経験をさせてもらったので、今後は一つひとつの仕事をより深く知りたいと思っています。給排水や空調設備などの専門分野は、まだまだ分からないことも多くて・・・・・・いずれはビル管理のプロフェッショナルになるのが目標です」
空港の安全を守り、安心して利用してもらいたい。
空港が「当たり前」にあるのは、毎日の徹底した点検業務や、想いをもった空港スタッフに支えられているからなのだと、鎌田さんのお話を聞いて感じました。
多種多様な業務で、空港運営を支える岩手県空港ターミナルビル。
知識や経験を積むことで視野が広がり、自己の成長にもつながります。
「空港で働いてみたい!」「さまざまなことに挑戦してみたい!」そんな人にぴったりな仕事だと思いました。
(取材時期:2024年7月)
岩手県空港ターミナルビルに興味を持った学生さんにメッセージ!
求人サイトなどの限られた情報だけではなく、こうして企業や職業を深く知ると、イメージしやすく理想と現実のギャップが少なく済みます。様々な仕事に興味を持ち、調べ、触れ、想像して、可能性を広げてほしいです。
■岩手県空港ターミナルビル株式会社
岩手県、日本航空株式会社、花巻市、盛岡市、地元経済界などの出資により、第3セクターとして1981年に設立。いわて花巻空港ターミナルビルの管理運営を主な事業として行い、岩手県の空の玄関口として、地域の発展に大きな役割を果たしています。