みんなの想職活動

interview

2024/1/29 掲載

岩手で仕事はじめました/05

ビールの奥深さに惹かれ飛び込んだ醸造士の世界

岩手出身でUターンした人、県外からIターン・Jターンした人など、岩手で働き始めた社員さんをご紹介!今回は新卒でクラフトビールを作る世界に飛び込んだ、太極舎 暁ブルワリーの中久保雅貴さん(25)の登場です!

中久保さんは、ビールを作るブルワーの仕事を目指して就活されたんですか?

最初は食品や出版など、いろんな企業の採用試験を受けていました。でもあるとき、「定年までの40年間を働き続けるなら、自分が好きな業種じゃないと続かないのでは?」と思ったんです。そこから大好きなビールを作る仕事がしたいと考え、就活の方針を変えました。

ビールを好きになったきっかけは?

大学の頃、ワーキングホリデーでバンクーバーに行ったんです。家の周りに小さなブルワリー(ビールの醸造所)が30軒くらいあって、それを巡るのがすごく楽しかったんです。世界には100種類以上のビールがあって、味も香りも全く違うことを知りました。

ひゃく!?そんなにあるんですか?

大きくわけるとエールとラガーがあって、そこからさらにペールエール、シュバルツ、ヴァイツェンなど細かく分類されていくんです。日本の大手飲料メーカーが販売しているビールの大半は、喉越しが良くてごくごく飲めるスタイルのピルスナーです。

ビールが大好きという中久保さん。最近のお気に入りは、ベルギーの酵母を使った「ベルジャンホワイト」というスタイル。甘さを感じる“面白い”ビールだそう

国内にも多くのブルワリーがありますが、その中で暁ブルワリーを選んだ理由を教えてください。

ブルワーとして働きたいと思っていましたが、入社直後からビールの製造に関われる所が少なかったんです。暁ブルワリーでは現場で教えてもらいながら働けるので、そこに魅力を感じて応募しました。

八幡平市で作られている暁ブルワリーの定番シリーズ。缶は街のシンボルでもあるドラゴンアイ(鏡沼)をイメージしてデザインされたもの

移住前はどちらに住んでいたんですか?

東京です。これまで岩手に来たことがなくて、親に「岩手で就職する」と言ったらとても驚かれました(笑)。バンクーバーの冬も寒かったですが、八幡平市の場合は雪の量も多くて驚きました。地元の人たちからは「これくらいじゃ豪雪とは言わないよ。県内にはもっとすごい所があるから」と言われて、いつか“もっとすごい所”にも行ってみたいと思っています。

雪かきは辛くなかったですか?

冬が終わる頃にはだいぶ慣れました。年末に帰省したとき、関東でも記録的な大雪が降ったんです。実家だけじゃなく地域一帯を雪かきして回って、皆さんから喜んでもらいました。

雪国での経験が早速、生きたわけですね!

もともと山が近くに見える街で暮らしたいという思いがあったので、八幡平市は自分にとって理想的な場所です。スノーボードが好きで安比高原には何度も通いましたし、岩手に遊びに来た友だちも「雪質がすごくいい」って感動していました。夏のキャンプも楽しいですし、アウトドアが好きな人にはたまらない環境だと思います。

「八幡平市にはスキー場がたくさんあるし、雪質も良くてうれしいです」と語る中久保さん

オフも楽しんでいらっしゃるようですね!現在、お仕事はどんなことを担当していますか?

今はビールの醸造について一から学びながら、設備の洗浄や出荷前の検品作業などを行っています。ビールは麦芽とホップ、酵母、水という4つの原材料から作られます。麦芽を酵母の働きで発酵させてアルコールを作るのですが、使用する機器に汚れが残っているとカビや細菌が発生してビールが汚染されてしまうんです。そのため、細かい部分までしっかり洗浄することが重要です。

 暁ブルワリー八幡平ファクトリーの工場。一度の仕込みで350mlの缶を6000本ほど製造できる

暁ブルワリーでは、八幡平市の湧水「金沢清水」を使用しているそうですね。

そうなんです。当社は金沢清水があったから、ここでビール作りを始めたと言ってもいいかもしれません。一度の仕込みで使用する水の量は、およそ2000~2500リットル。ビールの約80%は水でできています。そのため、おいしい水が豊富に湧き出る八幡平市は、ビールづくりに最適な場所でもあるんです。

ほかにも御社が作るビールならではの特徴はありますか?

なんといってもオーガニック専門のブルワリーという点です。オーガニックビールを商品の一つとして製造している会社はありますが、専門としているのはおそらく当社のみではないでしょうか。私たちは金沢清水をはじめ、農薬や化学肥料を使っていない有機麦芽を使用。さらに工場を稼働させるために必要な電力は、市内にある地熱発電所から供給してもらっています。ビール作りの過程で出るモルト粕も、捨てることなく動物の飼料や農作物の肥料として再利用していて、循環型ブルワリーを目指しているんです。

これからの時代、ますます大切になる取り組みですね。中久保さんの今後の目標を教えてください。

将来的には、自分でレシピを考えて理想のビールを作りたいです。ただ、ビールを作るためにはレシピ以外にも必要な知識や技術がたくさんあります。今はそれらを勉強することがとても楽しいですし、ビールの奥深さや魅力を日々実感しています。いろんなスタイルのビールがあるので、お酒が飲める年齢になった方には、ぜひ飲み比べをして自分の“推しビール”を見つけてほしいです。

暁ブルワリー八幡平ファクトリーに興味を持った学生さんにメッセージ

弊社は、地域の資源を活用してビールを製造している会社です。ビールの生産、管理、出荷を一から学べますので、オーガニックやビールに少しでも興味のある方は、ぜひ一緒に自然の中でのビール造りを楽しみましょう。

■株式会社太極舎 暁ブルワリー
天然水で醸造するビールにこだわり、2020年に八幡平ファクトリーを開業。地域に根ざしたオーガニック専門のブルワリーとして、人にも自然にも優しいビールを醸造しています。2023年には清酒酵母を使ったオーガニック酒イーストビール「さくら」シリーズを販売。ビールの新たな魅力を発信しています。

▶︎シゴトバクラシバIWATE
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