interview
2026/2/2 掲載
STARTUPアドベンチャー/10
起業した人はどんなことを考えているの?「想いをカタチにする」ってどうすれば?山あり谷ありの起業ストーリーに迫るべく、岩手で活躍する起業家をご紹介。今回は、ネビラキ合同会社代表の瀬川然(せがわ・しかり)さんにお話を伺いました。
岩手県と秋田県の県境に位置する、西和賀町。
県内でも屈指の豪雪地帯として知られるこのまちは、雪の多さによって生まれる豊富な水が、美しい自然やおいしい農作物を育んできました。
また、錦秋湖やブナの原生林など、四季折々の自然を体感できるスポットが点在し、温泉地としても観光客の人気を集めています。

しかしその一方で、人口減少や高齢化が深刻化し、地域の暮らしをどう支えていくかという課題に直面しているのが現状。
そんな状況のなか、地域課題を解決するために会社を立ち上げ、新たな事業を行っているのが、ネビラキ合同会社の代表を務める瀬川然さんです。
ネビラキ合同会社は、ネイチャーツアーのガイドやカフェ、宿の運営を行っている会社。事業を通じて、西和賀町の魅力を多くの人に伝え広げるための挑戦を続けています。

自然保護活動をしていた両親の影響で、幼少期から町内の自然に触れることが多かったという瀬川さん。小・中・高と地元の学校で学んだあと、「地域に貢献できる仕事に就きたい」と、西和賀町の道の駅や温泉施設を運営している会社に就職しました。
しかし、その会社が掲げる「地域に所得と雇用をつくる」というミッションをなかなか実現できず、もどかしさを感じていたといいます。
「商店が毎年のように閉まって、事業を辞める人が出てきたり、公共交通機関の路線が廃止されたり、空き家が増えていったり。まちが衰退していくスピードがどんどん加速しているなと思っていました。さらに、そうした課題を『行政が解決するもの』という空気感がまち全体にあって、自分たちで行動を起こしていく自治の力が弱まっていることも感じていましたね」
その中で、瀬川さんが考えたのは、「まずは自分が動くこと」。自分自身が地域課題を解決するプレイヤーのひとりになる。その想いから、2019年に個人事業主としての活動をスタートさせます。
はじめは、ネイチャーツアーのガイドから事業を始め、2020年には妻の瑛子さんとともに、「ネビラキカフェ」を開業。その後、2024年にネビラキ合同会社を設立し、2025年7月にはカフェの隣にある物件を改修して、宿「ネビラキinn」をオープンしました。
「わらしべ長者みたいな感じで、人や物件との新しい出会いと、その時々の『自分ができること』が事業として積み重なってきた感覚があります。幼い頃の体験を生かしたネイチャーガイドからスタートし、いい景色が見える物件に出会ってカフェを開き、さらにその延長で宿も始めました。自分で『将来こんなことをやりたい』と決めすぎないからこそ、出会いに対してひらいた状態を保ったまま、のびのびと続けてこれたんだと思います」


個人事業主として起業してからの歩みを振り返りながら、「自分の人生を生きている感覚を持てるのがおもしろい」と瀬川さん。事業を通じて、地域だけでなく、自分自身の変化も感じているといいます。
「持っている資源はちっぽけだし、自分の身体ひとつでできることは限られていますが、経験を重ねることで、やれることがどんどん増えていくんですよね。もともとはカフェも宿も未経験でしたが、やってみることで自分の可能性が広がってきたのが、事業を続けてきてよかったなと思うところです」
さらに、今後の展望について「西和賀を、人間本来の感覚を取り戻せる場所にしたい」と瀬川さん。自分自身が地域のプレイヤーとして実践してきたことを、より多くの人に伝える活動に取り組んでいきたいと話します。
「便利さと効率を追求する現代社会では、暮らしを自分でつくる手応えがどうしても薄れてしまう。そんな中で、ここに来れば『自分は何をしたかったのか』『何に違和感を抱いていたのか』に気づくことができる。そして、日常に戻ってからも一歩踏み出そうと思える。西和賀町を、そんな場所にしていけたらと思っています」
西和賀町で、まちの人や自然に触れる機会を多く持ちながら、自身ができることを増やし、生業を広げてきた瀬川さん。その営みは、これからもこの土地とともに続いていきます。
(取材時期:2025年11月)
ネビラキから学生さんへメッセージ!
ものすごい情報に溢れ、本来の自分自身の幸せとはなんなのかを見失いがちな現代。時代や周りがこうだからとかという価値観ではなく、「自分がこう生きたい」という価値観を見つければ、物質的豊さのピークに達してしまった現代社会でも毎日瑞々しく充実した日々を送ることが可能だと思います。一度きりの人生しかないのだから、内側にある想いを見つめ直し、時代や社会に投げかけるのも一つの生き方です。ありがたいことにAIやテクノロジーの発達により、どんな場所にいてもスタートを切ることが可能になりました。リスクを取ることを選択したから見えてくる充実感や幸福感は何にも代え難いものです。生き方に答えはありませんが、自分の力を試す、そこから見えてくる世の中の成り立ちを知った時、自分のやるべきことがはっきりしてくると思います。起業という手段も視野に入れながら、自分自身の人生を生きる人が出てきたら嬉しいです。

■ネビラキ合同会社
岩手県西和賀町で、ネイチャーツアーのガイドや、空き家を活用したネビラキカフェ、ネビラキinnの運営を行う、ネビラキ合同会社。「ネビラキ」は、春先に木の根元から雪が解け始める自然現象「根開き」が由来。西和賀町という土地がゆるやかに外へ開かれていくイメージと、未来へつながるふるさとづくりへの想いが込められています。
▶︎企業URL
https://www.nebiraki.com/





