interview
2025/11/11 掲載
こんな仕事があるのか岩手/18
「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。今回ご紹介するのは、鉄道の安全を支える「保線」の仕事。東日本旅客鉄道株式会社(以下:JR東日本)の北上保線センターにお邪魔して、仕事のあれこれを聞いてきました。
関東・甲信越から東北まで、1都16県をつなぎ、多くの人々の暮らしを支えているJR東日本。岩手県全域と青森県、宮城県、秋田県の一部を営業エリアに持つ盛岡支社は、鉄道輸送を中心に観光列車の運行や新たな物流サービスなど、さまざまな事業を展開しています。
鉄道というと駅員や乗務員の仕事をイメージする人が多いと思いますが、それだけではありません。JR東日本には、輸送・車両、機械設備、土木、建築、電力、信号通信システムなどさまざまな職種があり、特に鉄道の要となるのが列車の運行を最前線で支える「保線」です。
保線とは、列車が安全に走行できるよう線路や関連設備を保守・管理する仕事のこと。列車は毎日、繰り返し運行しますから、線路には少しずつ負荷がかかり、不具合が生じる箇所も出てきます。線路の状況を常に良好な状態に保つためには、こまめな点検や手入れが欠かせません。
こうした仕事を一手に引き受けているのが、「盛岡保線設備技術センター」。エリアごとに決められた在来線の保線業務を専門に担当する拠点となる保線センターを一ノ関・北上・盛岡・青森の4カ所に配置しています。

「入社前は工事現場で仕事をするようなイメージがあったのですが、実際には施工を担うパートナー会社に工事発注をすることが多いんです。土木関係の仕事をしている父から詳しい話を聞いて、興味を持ったのが入社のきっかけです」と話すのは、北上保線センターで勤務する齊藤彩莉(さいとう・あやり)さん(26)。
大学では語学分野を専攻していたという齊藤さんは、いわば文系のひと。全くの畑違いの保線の仕事を覚えるのは、かなり大変だったのではないでしょうか。
「保線の知識や技術を学べる学科って、実はどこの学校にもないんです。だから、理系も文系も関係なく、みんなゼロからのスタート。入社してすぐ、福島県の研修センターで数ヶ月間みっちり基礎を学ぶのですが、同期同士で教え合い、励まし合って乗り越えましたね」と、齊藤さん。誰もが初心者で、誰もが同じ目的で学び合う仲間。当然、男女も関係なく、良きライバルとして切磋琢磨していけるのだといいます。

齊藤さんが勤務する北上保線センターは、東北本線の水沢~花巻空港間、北上線の北上~黒沢間、釜石線の全線を管轄し、線路の検査やメンテナンス、保守・管理を担うプロフェッショナル集団。その中で、齊藤さんは東北本線の「分岐器(ぶんぎき)」を専門に担当しています。
分岐器とは、線路を2方向へ分けるための装置で、レールが交差する複雑な構造をした設備。しかも、多くの部品で構成されているため、検査だけでも20~30種類もある上に、検査周期もバラバラなのだとか。
線路のゆがみ具合を調べる軌道変位、分岐器の機能を調べる機能検査、さらに詳細に分岐器を調べる細密検査など、あらゆる角度から検査を行い、法令の基準から分岐器が健全な状態かなど、慎重にチェックしています。

「基本的にはパートナー会社が検査した結果をこちらで確認して、気になるところは調査に出かけ、パートナー会社に修理を依頼。施工が終わったら再度チェックを行うのが、仕事のサイクルです。その指示図を作るのも私たちの仕事ですが、JR社員が直接検査するものも結構ありますから現場には頻繁に出ていますね」。

こうした定期的な検査のほかに、自然災害やトラブルなどで異常が生じれば、真っ先に現場に駆けつけるのが保線センターの役目。日頃から天候の変化に目を光らせ、いざともなれば一刻も早い運行再開を目指して迅速な対応が求められます。
「保線が支えなければ列車は安定した走行ができませんから、その安全を背負っているという責任の重さを常に感じています。だからこそ、検査の見落としがないよう厳重にチェックを重ねますし、少しでも違和感を覚えたら必ず共有することを心がけています」。
直接、感謝されることは少ないものの、多くの人々の安全を支えているという誇りが、齊藤さんの仕事の拠り所。少しでも数値が改善したり、乗り心地が解消されたり、自分たちの仕事が確かな成果として現れることに手応えを感じています。


職場には若い世代も多く、頼りになる先輩の女性社員もいて「心強い」という齊藤さん。緊急時こそ昼夜関係なく対応しなければなりませんが、フレックスタイム制とテレワークが導入されているため、個々の状況に合わせた働き方ができることもメリットの一つとか。
こうしたバックアップを受けながら、利用する全ての人が安心して目的地までたどり着けるよう、線路の安全を守る保線の仕事。
「もっと知識と技術を身につけ、緊急時も即座に指示できるよう経験を積んでいきたい」という齊藤さんのように、保線に関わる一人ひとりの熱意と志が、世界一といわれる日本の鉄道を支えています。
(取材時期:2025年9月)
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■東日本旅客鉄道株式会社盛岡支社
関東・甲信越から東北までをつなぐJR東日本の中で、盛岡支社は岩手県全域と青森県、宮城県、秋田県の一部を営業エリアとして管轄しています。平泉などの世界遺産や豊かな自然・文化をベースとして、「TOHOKU EMOTION」「ひなび(陽旅)」といった観光列車を運行。BRTによる輸送や「はこビュン」での荷物輸送、青森駅周辺の賑わいづくりなど、地域と連携した取り組みも展開し、地域に根差した多彩な事業を展開しています。





