interview
2025/2/14 掲載
ジャジャーン!自慢プロダクト/08

普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回登場するのは、本州一広いまち・岩泉町で生まれた「岩泉ヨーグルト」。モンドセレクション金賞を6年連続で受賞、15年を超えるベストセラー商品です。そんなヨーグルトの開発に至るまでのお話を、代表取締役社長の山下欽也(やました・きんや)さんにお聞きしました。
大谷翔平選手が岩手県の名物を教えてくださいという質問に「一番のオススメは岩泉ヨーグルトです。本当に美味しくて、僕は世界一だと思っています。※」と発言したことで、さらに人気に火がついた岩泉ヨーグルト。全国47都道府県のスーパーで販売され、今や工場での製造量は1日になんと16トン! いったいなぜ、ここまで人気のヨーグルトを開発することができたのでしょうか?
※出典「酒井医療株式会社ホームページ」
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実は、数年前から私も岩泉ヨーグルトのファンなんです。濃厚なのにサッパリとした後味と、モチモチとした食感がやみつきになってしまいます!

「長時間低温発酵」という製造方法が、独特の食感と味わいを生み出しているんですよ。通常の4倍ほどの18~20時間かけて、33~35度の低温でじっくり発酵させることで、より生乳に近い風味を保つことができます。

このあたりは昔から酪農が盛んな地域ですが、岩泉町の牛乳にはどういった特徴があるのでしょうか?

小規模の酪農家が多く、牛は家族同様に育てられています。そのせいか、牛乳に含まれる乳脂肪分や無脂乳固形分といった乳成分の数値が高いのが特徴です。牛乳本来の甘みが強いので、加糖タイプのヨーグルトも生乳本来の甘さを生かした作り方をしています。

岩泉ヨールグトといえば、アルミの袋。お玉ですくって器に盛るなんて、初めて食べた時はびっくりしました。

お客様からは「もっと食べやすい袋にしてほしい」と要望をいただくことがありますが、アルミ袋だからこその必然性があるので、この形状は譲れないんです。試作を重ねた結果、5層のアルミが最もにおいや光の遮断性に優れていることがわかりました。また、アルミが熱の伝導性を緩やかにするので、袋の中で発酵がゆっくり進み、ヨーグルトの風味がさらに深まります。

工場には「ひみつの菌」があるとお聞きしたんですが、本当ですか?

全国でも権威ある菌の先生を紹介していただき、岩泉町の生乳と相性の良い乳酸菌を研究開発しました。「作るならとことんこだわったものを」という先生の言葉が大きな原動力でしたね。


そもそも岩泉ヨーグルトを開発しようと思ったきっかけは何だったのでしょうか?

社長就任当時の経営状態は悪化する一方で、2億8000万円という負債を抱えていたんです。工場長として現場に長く携わっていた経験から、牛乳だけで利益を取ることは難しいと分かっていました。自社製造していた加工品は、コーヒー牛乳か、ヨーグルトかの二択。一念発起し、新しいヨーグルトを開発することを選んだのです。

決して平坦な道のりではなかったのですね。

ようやく会社が黒字になった翌年には、岩泉地区を襲った台風10号で工場がめちゃくちゃになり、絶望したことも…。
それでも、困難に直面した時、いつも人に救われてきました。新しい商品ができた時に伝えたい、いや、伝えなくてはならない人たちが大勢いるんです。どんなに人気の商品だって、いつまで続くかはわからない。だからこそ新商品開発を続け、「次はどんなものを作ってくれるんだろう?」というお客様や生産者の期待に応える会社でありたいと思っています。

「商品が並ぶのを見た時のよろこびは、何にも変え難いものがあります」と語る山下社長。その気さくな笑顔には、数々の苦難を乗り越えたからこその優しさが滲み出ていました。お世話になったたくさんの人たちに恩返しをしたい。その一心で、今日も岩泉工場は稼働しています。
岩泉ホールディングスに興味をもった学生さんへのメッセージ!
さまざまな物事に興味を持って意欲的に取り組める方、仕事に対して誠実でまじめに取り組める方、明るく、いろんな方とコミュニケーションをとれる方をお待ちしております。

■岩泉ホールディングス株式会社
2004年岩泉乳業株式会社として設立、2019年岩泉ホールディングス株式会社・岩泉乳業株式会社・株式会社岩泉産業開発が3社統合合併。主力商品である岩泉ヨーグルト・のむヨーグルトに加え、近年では「龍泉洞の化粧水」シリーズ発売や、こだわりのジェラート「ViTO×IWAIZUMI」を展開するなど、地元の豊富な資源をより魅力あるものに開発・発信することに尽力しています。