interview
2025/2/7 掲載
ススム働き方改革/13

北上川に沿って広がる北上盆地のちょうど中ほどに位置する、花巻市石鳥谷町。閑静な住宅街と田園風景に囲まれた場所に、社会福祉法人石鳥谷会が運営する、特別養護老人ホームいしどりや荘はあります。設立から30年以上にわたり、高齢者を対象とした福祉サービスを提供しています。
人手不足と言われている介護業界で、より質のいいサービスを提供しながら、働きやすい職場にするためにはどうすれば良いか。職員の満足度が利用者へのサービスの質の向上につながるという考えのもと、職員の「こう働きたい」という思いを尊重し、職場環境の改善に向けたさまざまな取り組みを実施しています。
職員の声をカタチに
「職員提案制度」

全職員から提案を募る「職員提案制度」がスタートしたのは、1994年。職員の声を聴くことが何よりも大事であると、当時の理事長の方針から始めたのがきっかけでした。
当初は、職員から毎年100件程度の提案があったものの、そのほとんどが愚痴や文句(!)だったのだそう。制度自体の良さをもっと活かしたいと考えた去石さんは、それまで無記名だった提案書を記名制にし、問題点や改善内容など具体的な提案を記入できるよう、記入シートの様式を変更しました。
すると、職員からはさまざまな提案が出るようになりました。例えば、「看取りに力を入れたい」という要望に対しては、職員用の休憩室を改修し、利用者の家族も寝泊まりできる看取り用の部屋を新設。また、研修生を受け入れた際に、研修に関わった職員への手当を支給してほしいという要望にも応えました。
すべての提案に対して検討し、すぐに取り組めそうなものは即実施。実施が難しい場合は、その理由を回答した上で、全職員に周知するようにしています。


自分の要望が通ると嬉しいですし、仕事のモチベーション向上にもつながりそうですね!
「チェックリスト」で
到達具合がひと目でわかる!
介護の業務は幅広く、身体的な介護技術や利用者とのコミュニケーションなど、業務ごとに細かい手順を覚える必要があります。大変そう……と思った、そこのアナタ。石鳥谷会では、新人職員の育成に介護技術チェックリストを活用し、先輩職員が一つひとつの業務の手順を細かく指導してくれるので大丈夫です!
また、指導担当者が不在の場合、チェックリストを見れば他の職員でも業務の到達具合がひと目で分かり、その都度必要な指導ができるようになっています。新人職員の育成状況は月1回の主任・副主任会議で報告し、常に組織内で共有できる体制にしているのだといいます。

また、石鳥谷会では、資格取得に必要な受講費用の助成や、講習会等を受講する際は勤務の一部として参加できるなど、キャリア形成支援にも力を入れています。高卒者や無資格・未経験で入職する職員も多く、そういった場合でも積極的にチャレンジできる環境が整っており、昇給・昇格へのモチベーションや、提供するサービスの質の向上にもつながっています。



周りのサポートのおかげで、未経験でも安心して働けるのは心強い!
声をかけ協力し合う風土が
休みやすさを実現
介護職は休みが少ない、そんなイメージを持っている方も多いのではないでしょうか?石鳥谷会も、以前までは休みが取りにくく、それが職員の不満にもつながっていたと去石さんは話します。
「年次休暇を取る際に、朝礼で職員の前で報告しなければならなかったんです。それだと休みを取りたくても言い出しにくいですよね。これまでのしきたりを改め、皆が安心して休みを取れる雰囲気をつくっていく必要があると感じました」
その後、公休と年次の組み合わせによる連続休暇や、看護や育児休暇、リフレッシュ休暇などの取得を推進していきました。上司や総務側から職員に声かけをしたり、人手が回るように工夫してシフト調整をするなど、休みを取りやすい環境を整えたのだといいます。
その他にも、長時間労働の削減として、これまで業務時間外に行っていた研修や会議を、業務時間内に設定。このことで、早番の社員は一旦家に帰ってから再出勤する必要がなくなり、残業時間の削減にもつながっています。
「工夫すれば休みも取れるし、業務時間内に収められる。そういった実績を少しずつ積み重ねて、職員の意識を変えていくことが大事だったんだと思います」


これまで「当たり前」となっていた風土そのものを見直す。とても大事な視点だと思います!
石鳥谷会では、若者の採用・育成にも積極的に取り組んでいます。若者の雇用管理の状況などが優良な法人として、「ユースエール認定企業」にも認定されました。年々、職員の平均年齢が若返っており、離職率や定着率も改善されているといいます。
「やりたいことがあれば何でも挑戦できる環境だと思うので、アイデアや個性をどんどん活かしてほしいです」と、去石さん。職員の「こうやりたい」「こう働きたい」を実現し、介護職のネガティブなイメージを払拭していきたいと意気込みます。
施設を利用する人も、働く人も、両方がいきいきとしている姿を目指して。そんな健やかさが感じられる職場だと思いました。
(取材時期:2024年8月)
石鳥谷会に興味を持った学生さんにメッセージ!
職員が「こうやりたい」「こうしたい」「こう働きたい」という思いを実現できる環境を整えています。私たちは、誰もが幸せを感じられ、安心して暮らせる地域づくりを目指しています。

■社会福祉法人石鳥谷会
1990年設立。花巻市石鳥谷町内で、特別養護老人ホームを中心に、老人デイサービスセンター、居宅介護支援事業所、小規模多機能施設を運営しています。「日々すべての人々とともに感謝の気持ちを忘れず、しあわせを築く道を歩みたい」の経営理念のもと、職員が「こうやりたい」「こう働きたい」という思いを実現できる環境を整えています。「いわて働き方AWARD2020」で最優秀賞を受賞。
■シゴトバクラシバIWATE
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