interview
2025/1/13 掲載
あつまれ!熱血技術者/11
ものづくりに魅せられ、製品開発に心血を注ぐ技術者たち。彼らは、どんなことにこだわり、どうやって驚くようなアイディアを生み出すのか? 日進月歩の世界で凌ぎを削る、熱き技術者たちに迫るこのコーナー。今回は、株式会社アイオー精密の北将貴さんにお話をお聞きしました!
「ファクトリーオートメーション」(FA)という言葉をご存知でしょうか。機械化された工場で、人の手に頼っていた操作をも自動化したシステムのことです。今回訪れたのは、自動車や光学機器などの生産ライン等で使われるFA装置の部品を製造しているアイオー精密です。
製品の種類を絞って大量に作ればコスパよく稼げるのは想像がつきますが、少量ずつでもあえてたくさんの種類を生産しているのが同社のユニークなところ。お話を伺った生産技術課の北将貴(きた・まさき)さんも「普通に考えたら儲からないだろうというやり方で利益を上げているので、いつも同業者には不思議がられます」と言います。
聞けば0.01ミリ単位で異なる種類が存在するような部品の数々を、毎日3万点前後も出荷しているというから驚き。売上の3割に相当する商品が総合商社を通じて海外に出荷される、FA部品製造の業界大手です。
この会社で北さんが担当しているのが、加工の現場で問題を抱えている工程を、技術やアイデアで改善する仕事。金属のリングひとつ作るにもやり方に決まりなどない世界、アイテム数の多さも相まって工夫の余地はいくらでもあり、うまく効率を上げれば会社の利益にも結びつく重要な業務です。
「安く出来ても時間がかかりすぎたらダメ。コスト、時間、消耗する資材のバランスのいいところを探らないといけない。悩みが尽きないくらい改善代(かいぜんしろ)があるんです」
その無限の可能性が仕事の一番の面白みだという北さんも、キャリアのスタートは加工の現場からでした。行動を起こしたのは入社して10年が経った頃。自分の環境を変えたいという一心で、頼まれてもいない提案資料を作って提出するなどして「意図的に」目立ち始めました。
「ラクして生産したかったんです。ほんとは機械で出来るよなって思う工程がたくさんあって、だったら変えていこうと。『これが正解』みたいに言われるものは絶対ウソだと疑うタイプなんです(笑)」
残業もありかなり大変な時期でしたが、「やらなければいけないと思っていたし、結果的にラクになるのがわかっていたから苦ではなかった」と北さんは言います。理解ある上司やチャレンジを歓迎する社風にも恵まれました。
念願かなって現在の生産技術課に配属になった北さん。これまでずっと人の手で行われてきた工程が数々の検証を経て自動化されるなど、多くの成果を上げる一方で、もっとみんなのレベルの底上げをした方がより効果的だと考えるようになりました。
「当社のような500人規模の会社になると自分一人が頑張ったところでたかが知れてます。だったらみんなの脳みそを使わせてもらった方がいい。だから加工の研究をする委員会や、私が塾長を務めている技術者育成プログラム「匠塾」などを通じて、知識や技能を共有しているんです」
結果は、受ける相談の質の変化として現れました。困りごととセットで「こうしたら上手くいくと思う」といった、ゴールに近い提案をされるようになったのです。北さんが受け持つ領域に踏み込んでくる現場スタッフが増えたことで、最終的には「おれ不要論」が出ると思うと笑う北さん。だけど「それでいいんです」ときっぱり話す様子に、目指すゴールと志の高さが窺えました。
仕事をする上で心がけていることについて聞いてみると、「自分のお客さんはここで働くみんな。だから彼らのニーズをちゃんと聞く」という回答が。技術的なことだけを考えればより良い方法もあるけれど、現場の人も責任とプライドを持ってやっているので、提案はしても受け入れられなければ取り下げることもあるそうです。
どれだけ機械化やAIの導入が進んでも、それらを上手に活用できるかどうかは人次第。今日も北さんは現場に足を運び、次々と声をかけられ、耳を傾け、小さな改善をコツコツと施しながら、目の前に広がる大きな可能性に挑戦しているのです。
アイオー精密に興味を持った学生さんにメッセージ!
ものをつくるのに、最終的な「これが正解」はありません。日々情報が更新されるので、常に「新しい」を全員で求めています。そしてアイオー精密にはそれを支える理解ある上司やチャレンジを歓迎する社風があります。「ワクワク」の気持ちを持ちながら仕事をしています。
■株式会社アイオー精密
FA部品を製造する業界の中でも屈指の機械台数を保有、最先端のデジタル技術を武器にして、岩手を拠点に世界と繋がって新しいものづくりに挑戦しています。他ではまねできない「多品種少量生産」でお客様のニーズの一つ一つを拾い上げ、お客様の「これが欲しい」を実現しています。2016年度には、わが国で最も歴史と実績のある中小企業のための賞「グッドカンパニー大賞」のグランプリを受賞、全国の中小企業の中でも経済的、社会的に優れた成果を挙げている企業として表彰されました。
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