interview
2024/10/17 掲載
世界に推したい企業/07
食を通じて都市と地方をつなぐ株式会社雨風太陽。生産者の声を消費者に届けるほか、実際に現地へ足を運ぶ仕組みづくりも行っています。日本最大級の産直EC事業も手掛けている同社に、ミッションの実現に向けた思いを伺いました。
東京と岩手県花巻市に拠点を持つ「雨風太陽」は、「都市と地方をかきまぜる」というミッションを掲げています。その先にあるビジョンは、都市と地方をつなぐことで持続可能な未来を作り「日本中あらゆる場の可能性を花開かせる」こと。自然の恵みをもたらしてくれる雨や風、太陽のような存在になりたいという思いから「雨風太陽」と名付けられました。
そんな同社では、主に食を通じて事業を行っています。主力となるのは、「ポケットマルシェ」。アプリを介して生産者から直接食材を購入できる、日本最大級の産直プラットフォームサービスです。
「通称『ポケマル』と呼んでいて、全国各地の生産者さんが8300人ほど登録しています。消費者であるユーザー数は77万人ほどで、購入者の約8割がリピート。生産者さんと直接メッセージのやり取りができるので、親近感を抱きやすく食材への関心が増したという声もあがっています」
そう語るのは、「雨風太陽」でPR部部長を務めている仲野脩(なかの・おさむ)さんです。同社の創業について伺うと「東日本大震災で、創業者である高橋博之(たかはし・ひろゆき)が目にした光景がきっかけでした」と教えてくれました。
「高橋は、都会から来たボランティアが被災者に感謝されることで、生きがいや活力を得ている様子を何度も目にしたそうです。以前から都市と地方、消費者と生産者が分断され、お互いの姿が見えづらい日本の在り方を危惧していた高橋は、地域と多様に関わる『関係人口』という概念を考案。今では国や自治体など、地方創生に取り組む人たちの中でごく自然に使われる言葉になっています。」
高橋さんは関係人口を増やすため、「雨風太陽」の前身となる「NPO法人東北開墾」を立ち上げて「東北食べる通信」を創刊。これは生産者を取材し、その人が育てた食べものと一緒に情報誌を届けるというもの。この事業を起点に「ポケットマルシェ」が始まり、さらに現在は「ポケマルおやこ地方留学」や、各自治体との連携事業なども展開しています。
「ポケマルおやこ地方留学」とは、小学生の親子を対象とした旅行関連サービスのこと。親子で生産者のもとを訪れて一週間ほど滞在し、子どもは自然体験、保護者はワーケーションをしながら過ごします。
「ポケマルを通して生産者と消費者の距離は近くなるものの、実際に現地へ足を運ぶのはハードルが高いです。そのため私たちは、地域の風土や文化を体験し、生産者さんと直接触れ合う機会を提供。これによって、さらに都市と地方をかきまぜていきたいと考えています」
さらに仲野さんは、「都会で育ったお子さんは、故郷と呼べる“田舎”がありません。地方留学を通して、第二のふるさとと出会ってもらえればうれしいです」と、笑顔で語ってくれました。
仲野さんに「雨風太陽」で働く魅力を伺うと、「日本の自然や文化、風土などを守る取り組みに貢献できることです」という答えが返ってきました。
「いろんな土地の文化や歴史を知ることは楽しいですし、日本の原風景を守ることに関わっているという実感もあります。生産者の皆さんとの距離も近く、旬の野菜や果物などが届くこともあるんですよ」
「今後は各事業を今まで以上にレベルアップすることに加え、体験・宿泊といった食以外の事業にも力を入れていきます。さまざまな取り組みを通して、2050年に2000万人の関係人口を作ることを目標にしています」と語る仲野さん。
「雨風太陽」は、これからも都市と地方をかきまぜて日本中に笑顔の花を咲かせていきます。
(取材時期:2024年8月)
雨風太陽に興味をもった学生さんにメッセージ!
「都市と地方をかきまぜる」という考え方では、それぞれの良い所をフラットに見て再配列し、新たな価値を生み出すことが出来ます。魅力ある日本の自然・歴史・文化を守るために、多様化・複雑化した社会課題の解決に興味のある方はご連絡ください!
■株式会社雨風太陽
2015年設立。前身となる「NPO法人東北開墾」では、世界初となる食べ物付き情報誌「東北食べる通信」を創刊。生産者の思いや風土などを丁寧に取材した冊子と一次産品が一緒に届くもので、現在も国内外を合わせて19箇所で発行しています。「ポケットマルシェ」や「ポケマルおやこ地方留学」のほか、80以上の自治体と連携し地産品のPRや移住定住ツアーの構築なども手掛けています。
▶シゴトバクラシバIWATE URL
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/74000010100180