みんなの想職活動

interview

2024/11/18 掲載

STARTUPアドベンチャー/06

リハビリロボットでこれからの医療を支える

【東北医工/盛岡市】車載ネットワーク機器のものづくり技術を活かして、医療機器の開発へ。脳卒中リハビリロボットの製造に取り組む株式会社東北医工にインタビュー!

2022年5月に設立した、株式会社東北医工。能動型手用他動運動訓練装置「脳卒中リハビリロボット」をはじめとした、医療機器の開発・製造を行っています。

代表を務めているのは、大関 一陽(おおぜき・かずあき)さん。大関さんは車載ネットワーク機器などを製造している株式会社ピーアンドエーテクノロジーズの代表も務めていますが、なぜ東北医工を設立することになったのでしょうか。

左が代表の大関さん。東北医工のみなさんは、岩手県のヘルステック関連の中核企業が集まる「ヘルステック・イノベーション・ハブ」にオフィスを構え、仕事をしています

「車の需要が若者を中心に減ってきているなか、車載コンピュータの検査装置の開発・製造以外に別の事業を行う必要性を感じていました。ちょうどそう考え始めた頃に、岩手大学理工学部の三好 扶(みよし・たすく)教授から『脳卒中患者向けの医療機器がつくれないか』と相談を受けたのが東北医工を創業したきっかけです」

車載コンピュータの検査装置の開発・製造で培ってきたものづくりの技術を活かし、医療機器の開発・製造をスタート。「分野は違っても、必要とされる技術は大きく変わらないので、医療の専門家からアドバイスを得ることで事業を始めることができました」と大関さんは当時を振り返ります。

三好教授から相談を受けた「脳卒中」は、要介護者が介護を必要とすることになった原因の第2位になるほど患者数が多く、その数は全国で約110万人。後遺症が残ることもあり、患者の多くは不自由な生活を強いられています。

そのなかで、脳卒中によって片麻痺(身体の左右どちらかに麻痺の症状が見られる状態)が起きた場合、最優先に行われるのは移動(自立歩行や車椅子使用など)に向けた治療・リハビリ。そのため、歩行訓練用の機器は多く製造されていますが、その他の機器は充実していないのが現状です。

さらに、その治療やリハビリを行うことができる理学療法士や作業療法士の数は約10万人と、患者数に対して治療できる人の数が少ないことが問題視されています。

そこで、大関さんが三好教授とともに考えたのが、手指を動かすためのリハビリロボットの開発。手指のリハビリも、日常生活を行う上でとても大事な要素のひとつです。

「これまで手指のリハビリは、患者の手指を治療者がもみほぐすことによって行っていました。しかし、治療者の数が少ない問題から、患者全員のリハビリを行うことができていなかったんです。そこでロボットを開発することで、治療者不足の解決と立位・歩行訓練以外のリハビリの充実というふたつの目的を果たすことができると考えました」

リハビリロボットの開発は、岩手大学や東北大学の研究機関と連携しながら2013年に開始。初めて製造した1号機からブラッシュアップを重ね、2023年に6号機となる実用化に向けたモデルが完成しました。

コンセプトは、「臨床現場で簡単に使える」こと。ロボットハンドに両手を入れるだけで使用でき、グローブなどの専用機器の装着が不要なため、手軽ににリハビリを行うことができます

「正常手(リーダ)の動きによって、訓練している手(フォロワー)も同じ動きをする『リーダフォロワ方式』を採用し、さまざまなエビデンスに基づいた機能を実装しています」

リハビリロボットのディスプレイには、ゲーム映像を流すことで、リハビリが単調な作業にならないような工夫も。なかには、岩手山を背景に「わんこきょうだい」を掴むゲーム映像も導入されています

現在は、製品をさまざまな病院・施設に導入するために、医療機器としての承認手続きを行っている段階。まだ販売はできませんが、病院で試験的な使用を行っているといいます。

「これまで使っていただいたなかで、自分のご家族が脳卒中で片麻痺をしているという方から『病院に相談しても手指のリハビリをすることはできなかったので、このロボットがあると助かる。ぜひ製品化してほしい』と嬉しいお言葉をいただきました。他の方からも製品化に向けたポジティブな話をたくさんいただいているので、患者さんたちのためにもいち早く実現できたらと思っています」

2023年11月に開催された、テクノロジーを活用したサービスを募集し、優れたアイデアを表彰するビジネスコンテスト「X-Tech Innovation2022」の東北地区選考会では、東北医工が岩手県の企業として初の最優秀賞に選ばれました

車載ネットワーク機器から医療機器の開発・製造へ。また、新たな会社を起業しての挑戦に「諦めない姿勢が大切」と大関さん。今後は国内だけでなく、海外にも事業を広げていきたいと意気込みます。

「はじめは製品をつくるにも、医療の知識が全然なかったので本当に大変だったんです。それでも諦めずに続けてきたことが多くの方に評価されて、ここまで来ることができました。まだ製品化に向けて動いている段階ですが、多くの患者さんの役に立てるような医療機器の開発・製造にこれからも取り組んでいきたいです」

ロボットの開発によって、医療・リハビリの未来を支える東北医工の挑戦。脳卒中リハビリロボットの製品化からその他の医療機器の開発まで、今後の取り組みにもぜひ注目してみてください。

(取材時期:2024年8月)

大関さんから学生にメッセージ!

岩手県では数少ない自社で医療機器の開発・製造・販売を行っている会社です。医療器やロボット制御、組込みコンピュータに興味のある学生の皆さん、一度会社に遊びにきてみませんか。

■株式会社東北医工
脳卒中リハビリロボットをはじめとする医療機器の開発に取り組んでいる、株式会社東北医工。岩手大学をはじめとする各大学の研究機関との産学連携を推進しながら、療法士による徒手的なリハビリテーションの一部を代替する、医療機器の開発に挑戦しています。
https://tohoku-ms.com/