みんなの想職活動

interview

2024/10/24 掲載

世界に推したい企業/08

発酵で、楽しい社会を!資源が循環するものづくり

お米や規格外の野菜、果物などを発酵させてつくるエタノールを原料に、化粧品や日用品の製造・販売をしている株式会社ファーメンステーション。岩手県奥州市の休耕田でつくるお米からはじまった「循環型社会」をつくる取り組みについて、お話をお聞きしました!

・環境も社会もよくなる!すべての資源が循環するものづくり
・未利用資源から、化粧品や日用品など身近な商品を開発
・国際認証「B Corp」を取得するなど、事業性と社会性を両立した事業を展開

岩手県奥州市と東京に拠点を構える、株式会社ファーメンステーション。規格外の農作物や食品・飲料の製造時に出る副産物などの未利用資源を、発酵・蒸留してエタノールなどさまざまな発酵原料を開発・製造している会社です。

そうして生まれたエタノールなどから、化粧品や日用品などを製造し、未利用資源を再生・循環させる取り組みを行っています。

自社製品のほか、さまざまな企業と協働開発した製品の製造・販売を行っています

代表を務めているのは、酒井里奈さん。酒井さんは、もともと東京の金融関係の会社で働いていましたが、ある日テレビ番組で「発酵技術を活用した、生ゴミを燃料に変える技術」を知ると、発酵に興味を持つように。そこで知識を得るため、32歳の頃に東京農業大学応用生物科学部醸造科学科に入学しました。

ちょうどその頃、東京農業大学と奥州市が、休耕田の田んぼで作った米からバイオエタノールをつくる共同研究を実施。酒井さんも奥州市を訪れ、その研究に参加していました。

バイオエタノールをつくる共同研究は、その後実証実験を行ったものの、採算が合わないことから一度断念することに。そのなかで、酒井さんは「どうにか実験を続けられないか」と摸索し、米を発酵させたエタノールづくりに着目。

米からつくるエタノールを化粧品などの原料として利用することを提案し、研究事業を引き継ぐ形で、2009年にファーメンステーションを設立しました。

創業当初は、奥州ラボで原料・商品の開発から製造まですべてを実施。現在は、東京ラボで開発・研究を行い、商品化が決まったものを奥州ラボで製造しています

ファーメンステーションが創業当初から行っているのが、「循環型社会」の実現に向けた取り組み。

製品の主な原料であるお米は、岩手県の休耕田や転作田を利用し栽培した、オーガニック米。お米を独自の技術で、発酵・蒸留し、製造したエタノールから、ルームスプレーやハンドスプレー、アウトドアスプレーを開発しています。

さらに、発酵の過程ででる米もろみ粕は、石鹸やパックなどのフェイスケア用品、ハンドクリームなどのスキンケア用品などの原料に使われるほか、鶏や牛などの家畜の飼料として活用。その家畜の糞を田んぼや畑の肥料に使用し、ゴミを出さずに、資源すべてが循環する仕組みをつくっています。

米農家や養鶏農家など、地域の人と協力しながら、ゴミを出さないサステナブルな循環を実現させています

「社会にいいことを行っていても、事業として成り立っていないとその取り組みを持続させることはできません。事業性と社会性の両立を意識しながら、製品の製造・開発を行っています」と話すのは、奥州ラボマネージャー・岩手コミュニティーマネージャーを務める村上幸男さん。

その言葉の通り、ファーメンステーションは2022年3月に国際認証「B Corp」を取得。B Corpは、社会課題や環境問題に関わるあらゆる側面において高い基準を持って行動している企業に与えられる認証制度で、ファーメンステーションの事業性と社会性を両立した事業は、国際的にも評価されています。

創業のきっかけになった東京農業大学と奥州市の共同研究時に、市の担当職員としてプロジェクトに関わっていた村上さん。退職後、ファーメンステーションに就職し、奥州ラボのマネージャーを務めています

さらに、今後は「さまざまな未利用資源を活用した取り組みを広げていきたい」と村上さん。

すでに、米以外にも規格外の野菜や果物、ジュースの絞り粕などの未利用資源を活用した原料を開発し、JR東日本や薬王堂、ANAなど企業と協業したオリジナル製品の製造・開発も行っています。その取り組みを広げ、「未利用資源に新たな価値を見出し、それらが再生・循環する社会」の構築を目指しています。

シードルの製造時に出るりんごの絞り粕、市場販売できない規格外のバナナ、焼きおにぎりの生産過程で出る残渣など、さまざまな未利用資源を活用した、商品を製造

「今後は、海外への事業展開も検討しています。その上で、私たちが拠点を構えている奥州市ははじまりの地として、とても重要な場所。地元の農家さんなど、この取り組みを一緒に行っている人たちと一緒に農村風景を守り、豊かな地域をつくる。その想いはブレずに、これからも持ち続けていきたいと思っています」

循環型の社会をつくる仕組みを、奥州市から日本全国、世界へ。自然環境や社会、関係するすべての人々が、ファーメンステーションという「駅」を通過することで、前よりよくなり続ける。社名に込めた想いの実現に向けて、ファーメンステーションの挑戦は、これからも続いていきます。

ファーメンステーションに興味を持った学生さんにメッセージ

“ Fermenting a Renewable Society ” ~発酵で楽しい社会を~ 私たちは、未利用資源に新たな価値を見出し、これらが生まれ変わり、再生・循環する社会を構築します。 自然環境や社会、関係する全ての人々、ステークホルダーが、ファーメンステーションという「駅」を通過することで前より良くなり続ける、そんな世の中を作っていきます。 そんな新しい事業や社会をこの岩手の地から、日本へ、世界へ。一緒に作っていきませんか。

株式会社ファーメンステーション
規格外の農作物や食品・飲料の製造時に出る副産物などの未利用資源を、発酵・蒸留し、エタノールなどさまざまな発酵原料を製造しているファーメンステーション。さまざまな企業と事業共創によって、化粧品や日用品、雑貨などの商品開発を行っています。
https://fermenstation.co.jp/