interview
2024/9/26 掲載
こんな仕事があるのか岩手/10
「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。今回は、岩手県工業技術センターの研究員として働く伊藤菜々さんにインタビュー。研究を通して県内の企業とどう関わっているのか、詳しいお話を伺いました。
岩手県工業技術センターでは、製造業を中心とした県内企業に向けてさまざまな技術支援を行っています。1873(明治6)年に「岩手県勧業試験所」として創立し、現在は約50名の研究員が在籍。電子関係やIoT、産業デザインのほか、食品に関する取り組みなどを行っています。
ここで活躍している研究員は、県内企業から寄せられるさまざまな困りごとに対して専門知識をもとにサポート。さらに、それぞれが独自の研究テーマを持ち、企業や地域の発展に貢献しています。食品技術部で働く伊藤菜々さんもその一人で、企業との共同研究やスモーク食品に関する研究などを行っています。
伊藤さんが岩手県工業技術センターで働きはじめたのは、2020年4月のこと。その前は岩手県の職員として、食品関係の業務を担当していました。
「以前は衛生管理や営業許可などに関する仕事をしていました。経験を重ねるうちに、別の切り口から食品を扱う企業と関わりたいと思うようになったんです。当センターで研究員として働くことを希望し、異動が決まりました」
多くの研究員は、直接応募して採用されるケースがほとんどなのだそう。その中で伊藤さんは、県職員として培った知識と経験を生かし、研究という新たなステージにチャレンジしました。
「主な仕事としては、技術相談や企業訪問、企業との共同研究などです。企業からの相談はさまざまで、例えば『この商品の適切な保存方法や期間を調べたい』という依頼があったとします。その場合は微生物が増殖しやすい水分量を示す『水分活性』を調べて、必要な糖度や塩分、pHの値などを提案し、参考データとして利用してもらっています」
さらに伊藤さんは、スモーク食品の香りの変化に関する研究も行っています。
「使用するチップやスモークする時間によって、味や香りに微妙な違いが生まれます。それを可視化して、県内で生産されている商品のPRなどに活用できたらと考えています」
現在、国内でスモーク用チップを生産する主な企業は2社のみで、そのうちの一つが岩手にあります。伊藤さんは「研究の成果を他社との差別化にも役立てていきたいです」と語ってくれました。
「この仕事の魅力は、岩手の企業の役に立てることです。私たちの名前が表に出ることはありませんが、自分が関わったものが新商品の開発につながると達成感がありますし、やりがいも感じます」と、笑顔を見せる伊藤さん。もちろんスムーズに課題が解決するばかりではなく、試験や研究を繰り返しても良い結果が出ないことが多いそう。そんなときには、他部署の研究員に違った角度からアドバイスをもらうこともあるといいます。
「課題を解決するにはいろんな可能性に気がつくことが大切なので、探究心や好奇心がある人に向いている仕事だと思います。それぞれの経験を生かして、一緒に岩手の企業を盛り上げてもらえたらうれしいです」と、話してくれました。
(取材時期:2024年8月)
岩手県工業技術センターに興味を持った学生さんにメッセージ!
技術的な専門性を生かして、技術相談や試験研究など多様な側面から岩手の企業を応援し、地域に貢献できることが工業技術センターの仕事の魅力です。UターンやIターンの職員も多く働いています。研究員の募集を行う際は、ホームページ等でお知らせいたします。また、当センターへの採用を希望する方を対象に、見学を受け付けております。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。
https://www5.pref.iwate.jp/~kiri/news-detail.php?id=460
■地方独立行政法人岩手県工業技術センター
1873(明治6)年創立。「創るよろこび・地域貢献」を基本理念に掲げ、電子情報システム部と機能材料技術部、素形材プロセス技術部、DX推進特命部、産業デザイン部、醸造技術部、食品技術部の7部門に研究員を配置。県内企業の技術相談や依頼試験への対応、設備機器の貸し出しなどを行っています。
▶シゴトバクラシバいわてURL
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/64000050023591