みんなの想職活動

interview

2024/10/3 掲載

岩手で仕事はじめました/08

わたしと、地域のみんなの「やりたい」を形にする

岩手出身でUターンした人、県外からIターン・Jターンした人など、岩手で働き始めた人をご紹介!今回は、2017年4月に陸前高田市に移住し、2021年から岩手町に拠点を移して活動している、上田彩果さんにお話をお聞きしました。

岩手に移住したきっかけを教えてください。

岩手に関わるようになったのは、高校生の頃に東日本大震災の復興ボランティアに参加したことがきっかけです。

大学生になってからも、岩手県陸前高田市を拠点に「まちづくり」や「ひとづくり」に取り組んでいる「特定非営利活動法人SET(以下、SET)」の一員として活動していました。

移住したのは、大学を卒業してから。地域で新しい教育の仕事を作るために、フリーランスとして、2017年3月に陸前高田市に引っ越しました。

陸前高田市では、どんなことをしていたんですか?

最初は、地元の中高生と一緒に「高田と僕らの未来開拓プロジェクト」という活動を行っていました。

高田と僕らの未来開拓プロジェクトは、陸前高田市の中高生に、まちに愛着を持ってもらうことと、自分の未来を考えるきっかけをつくるために企画した取り組みです。ゆるキャラのデザインや、陸前高田市内の全1074世帯に手づくりプレゼントを届けるクリスマスイベントなど、中高生と一緒に30以上のプロジェクトを行いました。

中高生や一緒に関わる地域の大人たちが喜んでいる姿をたくさん見ることができて、すごく嬉しかったです。

クリスマスに開催したイベントの様子。SETを通して、多くの学生が地域に関わるプロジェクトに参加しました

2021年に陸前高田市から岩手町に拠点を移したのは、どんな経緯があったんですか?

陸前高田市で行っていた中高生とのプログラムを、岩手町でも行わないかと、町役場から声をかけてもらったことがきっかけです。それと、陸前高田市では、地元の中高生の活動のサポートを行ってきましたが、「今度は私自身が地域のプレーヤーとして活動したい」と考えたこともあって、岩手町に拠点を移すことを決めました。

その中で、コーヒー屋さんとしての活動をスタートしたんですね。

岩手町に引っ越す前に、陸前高田市から岩手町に通っていた時期があったんです。そのときによく盛岡市のコーヒー屋さんに寄っていて。お店に行きながら、「いつか珈琲屋さんをやりたい」と考えていたのを思い出して、カフェが少ない岩手町で夢だったコーヒー屋さんを始められるのではないかと思い「コーヒージャンキーウエダ」をスタートしました。

コーヒージャンキーウエダのコーヒーは、オンラインショップのほか岩手町にある「いわてユースセンターミライト」で購入することができます

今は具体的にどんな仕事・活動をしているんでしょうか。

SETとコーヒージャンキーウエダの活動を両立して行っています。

SETでは、中高生の第三の居場所づくりとして岩手町に立ち上げた「いわてユースセンター ミライト」の運営を行っています。

約2年の準備期間を経て、オープンしたのが2023年3月。1階が交流スペース、2階は学生が勉強などで利用できる空間になっていて、学生からお年寄りの方まで、地域の方がたくさん集まってくれる場所づくりができています。

また、コーヒージャンキーウエダでは、コーヒー豆を焙煎し、そのコーヒー豆の販売やイベント出店を行っています。

割合としては、週の4日をSETとして、1日をコーヒージャンキーウエダとして活動しているようなイメージですね。

ミライトでは、訪れた人が施設内を利用できる開館時間のほかに、音楽や料理、国際交流などさまざまなテーマに関連したイベントを開催しています

岩手に引っ越してから、生活スタイルや働き方は変化しましたか?

時間の余白が作れるようになったなと思っています。東京にいた頃は、物事を早く進めたいと思うからこそ、朝から夜中まで、予定をたくさんいれてしまっていて、人と会う時間が多かったんです。

でも、今は落ち着いて自分の時間を取れるようになっています。特に好きなのは、散歩の時間。岩手町にある「石神の丘美術館」は年会費2000円の「友の会」に参加すると、入館料なしで観覧できるようになるので、家から美術館までよく散歩しながら、自分のことについて考える時間を作っています。

上田さんが、散歩をしながらよく足を運んでいるという「石神の丘美術館」。自然豊かな景色とともに、アートを楽しむことで「自分の時間を持つことができる」と上田さんは話します。

仕事もプライベートもとても充実していることが伝わってきます!

岩手町には、自分らしい暮らしや働き方を実現しやすい雰囲気があるので、すごく楽しく生活できています。

私がコーヒー屋を始められたのもそうですが、地域の中でチャレンジを受け入れてくれる空気感が醸成されていることを、強く感じています。まちの人が自分のやりたいことを応援してくれるのはすごく嬉しいし、励みになりますね。

岩手町川口地区で約30年ほど前まで開かれていた市場を復活して開催している「ごんぼ市」の様子。上田さんは地域の人たちとのつながりを大切にしながら、岩手での活動を行っているといいます

最後に、今後の目標を教えてください。

これからは「多様な地域の仕事」を行うという意味で、百姓的な暮らし方や働き方ができればと思っています。地域の四季を感じながら、地域特有の仕事を生み出し、地域のみなさんと一緒に活動していきたいですね。

私は岩手に来て、陸前高田市と岩手町での仕事、暮らしの経験を経て、少しずつ「ありたい自分」が実現できている実感を持てています。より自分らしさを発揮しながら、地域のみんなの「やりたいこと」も実現できるような取り組みを続けていきたいです。

上田さんから学生さんにメッセージ!

高校や大学に進学するたびに、「将来何をやりたい?」って聞かれることが多いですよね。私もそのたびに「多分これかな」と答えていたけど、実は確信が持てなくて、なんとなくふわふわしていました。でも、一歩地域に飛び出してみると、仕事も暮らし方も、すごく多様でいろんな生き方をしている人がたくさんいるんです!私は岩手で、そんなわくわくする出会いがありました。皆さんも、自分らしいおもしろい働き方や暮らし方をしている人たちに、ぜひたくさん会いに行ってみてください!

(取材時期:2024年1月)

■特定非営利活動法人SET
岩手県陸前高田市を拠点に、学生や地域住民とともに「まちづくり」や「ひとづくり」に取り組んでいる団体です。2021年からは岩手県岩手町にある若者と地域の交流施設「いわてユースセンター ミライト」にも拠点を構え、地域に向けた活動を行っています。


■自家焙煎珈琲豆屋コーヒージャンキーウエダ
岩手県岩手町にある自家焙煎スペシャルティ珈琲豆屋。「いわてユースセンター ミライト」内に、2022年秋にオープン。自家焙煎したコーヒー豆の販売やイベントへの出店を行っています。