みんなの想職活動

interview

2024/7/18 掲載

あつまれ!熱血技術者/07

より高い精度を求めてレンズ研磨の技術を磨く

ものづくりに魅せられ、製品開発に心血を注ぐ技術者たち。彼らは、どんなことにこだわり、どうやって驚くようなアイディアを生み出すのか?日進月歩の世界で凌ぎを削る、熱き技術者たちに迫るこのコーナー。今回は、一関市にある株式会社アーアル研究所の小岩敬史さんの登場です。

一関市大東町にあるアーアル研究所は、一眼レフカメラやプロジェクター、車載カメラなどの光学レンズを製作する会社です。海外拠点としてベトナムにも工場を持ち、国内を含めて800人以上のスタッフが働いています。

お客様の要望に応えて、さまざまな光学レンズを手掛けている

同社が手掛ける光学レンズの曲率(きょくりつ/曲がり具合)は、なんと1万分の1ミリ単位で製造できます。さらにレンズの外径は1,000分の1ミリ単位、厚さは100分の1ミリ単位という、人の目ではとても判別できない精密な世界。取引先から依頼された規格に沿って、機械加工はもちろん、卓越した技能を持つ人の手によって精度の高いレンズに仕上げていきます。

どんなレンズにも対応できるよう、工場にはさまざまな機械が完備されている

今回、お話を伺った小岩敬史(こいわ・たかふみ)さん(31)は、シビアな品質が求められる環境の中、研磨工程リーダーとして活躍しています。高校時代はスポーツ科に在籍し、ものづくりとは無縁だったという彼。アーアル研究所を志望した背景には、経験したことのない分野への挑戦と「地元で働きたい」という思いがありました。

2011年に入社した小岩さん。一関市出身で、地元企業を中心に就職活動を行ったそう

「知識も経験もゼロからのスタートでしたが、入社後は各工程で研修を受けながら製造現場を知っていきました。その後は研磨工程に配属され、入社して5~6年ほど経った頃から工程リーダーを務めています」

最初はどんな工程を経てレンズが完成するか、全くわからなかったという小岩さん。それでも経験を重ねるうちに、点と点がつながって全体を理解することができたと言います。

担当する研磨工程では、レンズに曲率を付ける荒摺(あらずり)が終わったものを、一枚ずつ丁寧に磨きます。研磨と洗浄、検査を各工程のスタッフが繰り返し行うことで、傷ひとつないクリアな状態に。そして規格に合ったものだけが、次の心取(しんとり)工程(レンズの外周を削って精度を上げる作業)へと進むことができるのです。

左:研磨前/右:研磨完了

「1日の生産量としては、平均して約3,000個のレンズを研磨しています。規格ごとに大きさや形状が異なりますし、製品によっては外気温の影響を受けて加工面が変化するものもあります。研磨する際は液状の研磨剤を使うのですが、変化しやすいレンズは研磨剤の温度を調整ながら作業を進めていきます。同じやり方をしても、日によって精度の出具合に違いがあるんですよ」

製造スケジュールの管理やスタッフへの指示出しをしながら、自らも研磨作業に携わっている小岩さん。「精度が出ないと、もどかしさを感じることもあります」と言って、苦笑いを浮かべます。特に新しいレンズの試作品を手掛けるときには、何度も試行錯誤するそうです。

研磨作業は、レンズの表面形状や曲率を確認しながら慎重に進めていく

「似た形状のレンズを同じ方法で研磨しても、上手くいかないことはたくさんあります。そういうときは他のスタッフに相談したり、一緒に悩んだりして、お客様が求める精度に近づけていくんです」

整然と並ぶレンズの美しさは、アーアル研究所が誇る高い技術の証

そんな小岩さんが仕事をする上で大切にしているのは、「作業の前にしっかりと準備をすること」なのだそう。

「一つの製品を加工するにあたって、機械や必要な治具(ジグ/素材を加工する際の補助工具)を揃えておくことが大切です。そうすれば作業中に不具合が起きてもすぐに対応できますし、安定したものづくりができます。学生さんに置き換えれば、テスト前の試験勉強のようなものですね。しっかり勉強しておけば、試験当日に慌てずに済む。仕事も同じで、事前の準備が大切なんです」

こうした日々の心がけが、上質なレンズの安定供給につながっているようです。さらに小岩さんは、「ものづくりは、少し触れただけでは全てを理解することなんてできないくらい奥が深い世界です。知識や技術を学び、それを実践して試行錯誤しながら自分の技術を磨いていけることが一番の魅力です」と、教えてくれました。

現在、アーアル研究所では、医療器具に用いる光学レンズも試作中

「入社前は、機械による加工がメインだと思っていました。でも実際は、一人一人の技能の高さが品質に直結する世界。今後も技術を磨きながら、お客様が求める製品を作り続けていきたいです」

小岩さんは少し照れくさそうに笑いながらも、技術者としての誇りをにじませていました。

アーアル研究所に興味を持った学生さんにメッセージ!

地元企業で仕事すると自分の技術や経験を無駄にすることなく人生を創ることができます。

当社はこのエンジニアの仕事のほか、運営計画・品質管理・開発・技術営業・国際交流などでひとりひとりの技術と経験を育てます。

■株式会社アーアル研究所
1974年設立。一関市大東町に本社を構え、カメラ映像機材やセンシングなどのほか、2020年からは医療機器向けの極小径レンズにも着手。海外拠点であるベトナム工場も国内と同水準の能力を誇り、レンズ加工におけるほとんどの工程を一貫して行うことで、品質の高さと安定供給を実現しています。