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interview

2024/5/23 掲載

ジャジャーン!自慢プロダクト/04

世界最小!盛岡で生まれた最先端技術

普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回は研究現場で活躍する電動ピペットを紹介します。

岩手県盛岡市に世界の最先端技術を有する企業があることを知っていますか?

その技術とは、「プラスチック歯車を用いたマイクロアクチュエーターの量産」。減速機は直径4~8mmと小さく、プラスチックでそれをつくる技術があるのはなんと世界でも盛岡市の「アイカムス・ラボ」だけなんだそう! どんな技術なのか、取締役で技術者でもある上山忠孝さんにお話を伺いました。

右の小さな歯車が肝。モーターだけではできない細かな動きを実現することができます。左の3点が歯車を要したマイクロアクチュエーター

マイクロアクチュエーターは一般的にはどんなものに使われているんですか?

最も多く採用されているのは、工事現場などにある測量機です。測量機は、レーザーの光を遮ったり通したりを繰り返すことによって距離や高さを測るのですが、そうした光の制御を細かく行うことで正確な数値を導き出すことができます。

歯車は1回転すると360度ですよね。それを1600分割で制御できるんです。

1600分割……

1度よりもっと小さい角度で正確に光を制御できるので、精度が高い測量を実現することができます。

御社のマイクロアクチュエーターは日本全国で活躍しているんですか?

海外でも活躍しています。測量機は砂漠や南極に設置されることもありますが、過酷な環境下でも正確に測量できることが評価されています。

小さいサイズであることが大きなメリットなんですか?

プラスチックでこのサイズの歯車をつくっているのは世界でも我々しかいないはずです。軽いこと、コストが抑えられること、金属に比べ寿命が長いなどいくつかメリットがあります。

電動ピペットの開発から販売にまで関わった上山忠孝さん

このマイクロアクチュエーターの技術を応用して生まれたのが、今日お話を伺う「電動ピペット pipetty(ピペッティー)」なんですね。ピペットって、実験で使うスポイト状のものをイメージしますが……

想像されているように、中にバネが仕込まれていて、指でぐっと押して戻してという手動式が世の中のピペットの約8割を占めています。

電動式のニーズがあって開発されたのでしょうか?

この小さなアクチュエーターを活かした商品を何かつくれないかというところから開発が始まりました。これまで電動式のピペットが普及していなかったのは、重たかったからなんです。軽量化・小型化は、このサイズのアクチュエーターがあったから実現できるものでした。現時点でも世界で一番軽くて小さい電動ピペットなんですよ。

世界一なんですね! 他にも特徴があるんですか?

先端近くにボタンを付けました。一般的なピペットの持ち方ですと、狭い場所や小さい場所での操作が難しいらしくて、ペンのように持てることで操作性を高めることができました。

液晶には、吸引・吐出の量や回数、速度などが表示されます。正確な数値を把握できるのも安心です
一般的なピペットの持ち方にも対応しています

ニーズを調査して生まれた特徴なんですね。

温度センサーも、ピペットメーカーではない我々だから付加された機能です。

どんな機能なんですか?

ピペットで正しい量を測るためには、約20度の環境下が必要と言われています。ですが37度くらいある人の手の熱は機器にも伝わるんですね。温度が上がると空気は膨張するので空気を介して吸引吐出をしているピペットでは水量にズレが発生するのですが、そうしたズレはピペットメーカーでは当たり前のことで、それに対しての対策は取られていなかったんです。仕方がないことというか。でも我々はピペット界の常識を知らなかったので、ズレが出てはまずいのではないかと開発を重ねて、温度によって水量を調整できる機能を付加することができました。

画期的な機能がたくさんあるんですね。そもそもこのマイクロアクチュエーターはなぜ盛岡で誕生したのでしょう?

創業者は大手電気メーカーの盛岡工場のエンジニアでした。その工場が閉鎖することになり、約20年前にベンチャー企業としてアイカムス・ラボを立ち上げたんです。前職ではプリンターをつくっていて、そこに使用していた歯車の技術を活用して最初に携帯用プリンターを開発しました。それは売れなかったんですが(笑)、せっかく開発した小型歯車を活かせないかと模索する中でマイクロアクチュエーターが生まれました。

以来場所を変えることなく、盛岡で技術が育まれてきたんですね。

地方にいながら世界で活躍するものづくりをしていこうという想いもあります。最先端の医療機器やIPS細胞を使った開発などにも携わっていますよ。

電動ピペット「pipetty」は、全国の大学や大学院、研究機関、製薬企業などで使われているほか、韓国・台湾・中国、アメリカ、ヨーロッパなどでも活躍しているそう。世界でも最先端技術の技術開発を担う会社に盛岡で出会いました!

アイカムス・ラボに興味をもった学生さんにメッセージ!

盛岡に拠点を置きながら、最先端の研究をしている教育機関や研究機関と一緒に技術開発をすることができる会社です。企画から開発・量産化・販売まで、ひとりが担う仕事の幅も多く、ものづくりの楽しさを実感できる職場ですよ。

■株式会社アイカムス・ラボ
世界最小・最軽量のペン型電動ピペット「pipetty」やコードレス電動ディスペンサー「Tofutty」など、液体制御装置の開発・製造・販売、マイクロアクチュエーターの量産・販売、医療機器の製品開発などを行う。第8回ものづくり日本大賞 経済産業大臣賞。岩手県のヘルスケア産業集積拠点施設「ヘルステック・イノベーション・ハブ(HIH)」に入居している。

▶︎企業紹介
https://www.icomes.co.jp/

▶シゴトバクラシバいわてURL
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/54000010035430