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interview

STARTUPアドベンチャー/02

好きなことを追求できる研究室みたいな会社に

「起業」という旗印のもとに大海に漕ぎ出したベンチャー企業やスタートアップ企業をご紹介!今回登場するのは、滝沢市にあるDefios(デフィオス)株式会社です。コンピュータが大好きな2人の大学院生が、「最先端技術をいち早く社会に還元したい」と、会社を立ち上げました。

話題のチャットGPTや自動車の自動運転、掃除ロボット、工場での不良品検知など、私たちの周りにはAI(人工知能)技術を使ったさまざまな製品やサービスがあふれています。

しかし、こうした製品やサービスが一般に普及するまでには、膨大な時間とコストがかかるもの。加えて、それを売るための市場調査などを含めれば、そう簡単に世に出すことはできません。

社会に役立つ最先端のICT技術を、もっと早く、もっと安く、もっと多くの人に提供できないだろうか?

そんな思いから会社を立ち上げたのが、近藤鯛貴(たいき)さん(25)と竹田大将(ひろまさ)さん(25)。二人はともに、岩手県立大学ソフトウェア情報学研究科で学ぶ現役の大学院生です。

自分たちの研究を実用化するために、大学院に進学して間もない2021年6月に、Defios株式会社を設立。近藤さんが社長、竹田さんが研究所長を務め、他に学生や社会人などテレワークで働く従業員が11人ほど在籍しています。

社長の近藤鯛貴さん(上)と研究所長の竹田大将さん(下)。二人とも現役の大学院生で、かなりのコンピュータオタクとか

近藤さんと竹田さんの出会いは、岩手県立大学の3年の時。PBL(問題解決型学習)の授業でチームを組み、意気投合したのがきっかけでした。

「その時に取り組んだのが、数千円で買える超小型コンピュータの性能を120%引き出すこと。ちっちゃいデバイスでAIを高速処理するって、世界でもほとんどやられていない研究だったんですよ」と、竹田さん。

AIは大量のデータを分析したり、自ら認識、学習、判断、予測などを行うことを得意とします。そのぶん大きな計算負荷がかかるため、大型のコンピュータや、クラウド上のAIにアクセスする必要がありました。

しかし、彼らは、そうしたAIの計算処理を小型コンピュータでも高速でできる技術を開発することで、コストを抑え、よりスピーディに普及できるようにしたいと考えたのです。

Defiosの「デフィオ」とはエスペラント語で「挑戦」の意味。起業時は、大学、県、滝沢市など多くの人が応援してくれました

世界でまだ世に出ていない技術。それを強みにDefiosを立ち上げ、彼らが開発したAIの処理を小型コンピュータで完結できるアプリケーションは、現在、医療や工場、獣害対策の現場などで活用されています。

特に岩手医大とは起業当初から共同研究に取り組み、入院患者の徘徊や離床などの行動を検知して端末に通知する「見守りシステム」を開発中。高額な既存製品よりも機能を高めた上で、価格も抑えられるため、より多くの病室・病棟で活用できる可能性が広がっています。

岩手医大と共同開発を行う「入院患者見守りシステム」。患者の動きを探知して、看護師などの端末に通知する仕組みです

その一方で、県が運営する起業支援拠点「岩手イノベーションベース」にも入会。起業家同士の交流や学び合いを深めることで、新たなつながりを広げたり、起業家を目指す学生たちを指導するなど、社外での活動にも力を注いでいます。

「私と近藤は経営者ではありますが、基本は根っからコンピュータが好きな技術者。大学の研究室のように自分たちがやりたいことを突き詰めていける会社をつくりたいと思っていたんです。起業3年目にして、ようやく環境が整ってきました」と、竹田さん。

Defiosは今、受託開発と自社開発という2本柱に加え、R&D部門を立ち上げ、社員たちが自分の好きな研究に打ち込める場をつくり、まだ世の中にない新たな技術の芽を育てようとしています。

学生時代から抱いてきた「最先端の技術をいち早く社会に還元したい」という思いを、いろいろな形で届けていくために。Defiosは、固定概念にもジャンルにも縛られず、どこにもない「おもしろい会社」を目指し、世界を変えるための挑戦を続けています。

(取材時期:2023年11月)

竹田さんから学生にメッセージ!

起業というと、何かしら大きな構想を得てから立ち上げるイメージを持つ人が多いと思いますが、実際に起業してみなければ見えないことが多々あります。我々は、仕事を通して社会の課題を肌で感じ、世の中に何が必要なのか、自分たちは何を提供したいのか、走りながら考えてきました。特に競争の激しいIT業界では、動き出すなら早ければ早いほどいい。やりたいと思うことがあれば、その時点ですぐに走り出すことも大事だと思います。そのためには、いろいろなことを経験して、自分の好きなことを見つけることが大事。どんなことでも、無駄なことはひとつもありません。最初から苦手と決めつけず、まずは挑戦してみることから始めてみてください。

■Defios株式会社
「ICT技術の価値を最大化し、人類に新たな体験を提供する」ことをミッションに、誰もが簡単に先端技術を扱い、各々が持つ課題を解決できる世界を目指して起業。高負荷なアプリケーションや高度な画像処理を、小型で安価なデバイスに搭載できる「高速化技術」を強みとして、AIやIoTの分野で事業を行っています。起業家を支援する「岩手イノベーションベース」の会員。

■岩手イノベーションベース
イノベーションを起こす人材を発掘し支援するために組織され、若い起業家が集まり、自分の夢に向かって切磋琢磨できる場。県内のメディアや金融、行政、そして国内最先端の技術を有する会社などが起業家の成長を支援しています。
https://iibase.jp/

▶︎企業URL
https://www.defios.jp/top