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interview

こんな仕事があるのか岩手/05

自然のリズムで生きる快適空間をデザイン!

「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。そんなわけで、今回はピーエス株式会社に潜入。人にも植物にも自然な環境を作り出すという同社の取り組みを紹介します。

取材にお邪魔したのは、八幡平市にある「PS IDIC(ピーエス イディック」。ここは温度と湿度の専門メーカーであるピーエス株式会社が1992年に開設した建物で、周囲の自然環境を生かした室内気候空間のモデル施設として作られました。

建物の周りに植えられた落葉樹は夏の暑い日差しを遮り、冬は木の葉を落として柔らかな日の光を室内に取り込むという優れもの。心地よい森林浴が楽しめる敷地内には宿泊可能なゲストハウスのほか、製造現場である鬼清水工場も併設されています。

そんなPS IDICに入ると、中にはふわりと暖かい空気が漂っていました。

折しも季節は冬。外の寒さが嘘のような心地良さを感じて、「さぞ大きなエアコンが稼働しているのだろう」と思ったのですが、室内はいたって静か。温風が吹いている気配もありません。

「この広い空間の暖房は、全て当社のラジエータで行っているんですよ」

そう教えてくれたのは、ピーエスの平山武久代表取締役(63)です。

お話を伺った平山社長。PS IDICは半袖でも大丈夫なくらい暖かく、長袖でも暑くないという不思議な快適空間

平山社長が示した先には、大きな窓の下に設置されたラジエータが目立たないようにひっそりと並んでいます。ラジエータは直接触れてもほのかに温かいという程度で、暖房設備がこれだけと聞いてもなかなかピンと来ません。

すると平山社長は、「ラジエータの中には温水が循環していて、そこからの放射熱と温度差で空気を動かす自然対流が起こり空間を温めているんです。部屋ごとの空気の動きや温度の感じ方を計算した上で、さまざまな場所に設置。熱を放射する面積を広げることで、低い温度のお湯でも全体を温めることができるんですよ」と教えてくれました。

ちなみにラジエータは、24時間運転。壁などに熱を溜めることで建物が冷え切ってしまうことがなく、必要な分だけ熱を供給できるのだそうです。これらは全て自社工場で製造しているため、タオル掛けや間仕切りなどさまざまな形に変化させることができます。

PS IDICでは、年間水温が約12℃と安定している八幡平市の地下水を活用。使用した水は併設する工場で再利用され、地中へと戻すサスティナブルなシステムを実現している(写真は「タオルウォーマー PS HR(E)」)

そんなピーエスのはじまりは、1960年のこと。高度経済成長期を迎えた日本で、国内初となる産業用加湿器の製造と販売をスタートしました。

当時はあらゆる工場がフル回転で稼働すると同時に、機械が発する熱で空気が乾燥し静電気が発生。その影響で度々、生産現場がストップしてしまうという課題に直面していました。

ピーエスが加湿器を販売した当初は、「高温多湿の日本で、なぜ加湿器を?」と聞かれることが多かったのだそう。しかし、国内の産業市場が発達するにつれて湿度調整へのニーズが高まっていったのです。

現在は産業用加湿器とラジエータによる冷暖房設備の2つを事業の柱としていて、営業拠点は北海道から九州まで全国各地に展開しています。八幡平市の工場では、加湿器の開発・製造を行い、全国各地のお客様へ、上質な湿度を届けています。

見る角度によって目隠しになるデザインが施された「放射冷暖房システム PS HR-C」

平山社長は「産業用加湿器には、各分野における最適な湿度の調整が求められます。例えば、印刷工場には一番美しく印刷できる環境を作りますし、きのこの栽培なら最も菌類が育ちやすい空間を提供します。それができるのが当社の強みですし、各専門分野にワクワクして飛び込んでいける人にとっては楽しい仕事だと思います」と語ります。

そうした産業分野のほか、公共施設や老人ホーム、学校、幼稚園、個人住宅など、ピーエスのフィールドは多岐にわたります。職種も営業や製品開発、製造などさまざまあり、各部門のスタッフが「その場所に求められる最も自然な環境」を作り出す専門家として活躍しています。

2023年には北海道大学で新設したワイン教育研究センターにおいて、ピーエスのラジエータを導入。音や振動のない洞窟のような空間を再現できる同社の製品は、ワインや食品の貯蔵に関する分野においても大きく貢献しています。

PS IDICの食品庫。「PS cantina」の冷房で11℃に保たれている

“快適な空間”というと、一年を通して同じ環境を保つことをイメージする人が多いのではないでしょうか。でもピーエスが考えるのは、あくまでも“自然の中の快適さ”です。

自然とは、時間や季節の経過とともに温度や湿度、明るさが刻一刻と変化していくもの。ピーエスが作る環境も、人が心地よいと感じる一定の範囲の中で絶えず移り変わっていくのだそう。その“ゆらぎ”のような変化が、室内環境における自然の心地よさを生み出しているのです。

「自然と同じような変化を室内に作ることで、人も植物も自然体で生きられるようになる。そうすることで体への負担を軽減し、より健康的な暮らしを送ることができるんです」

PS IDICの中で人と共存する木。開設当時は小さかった木がぐんぐん育ち、今では天井に到達してしまうほど

平山社長に今後のビジョンを伺うと「熟成や発酵など、微生物が関わる分野でも温度や湿度は非常に重要なので、今後はそれらに向けた取り組みも進めていきたいです。また人にとっても、どこにいても心地よいと感じられる空間ごとのデザインを作っていきたいと考えています」と教えてくれました。

人も植物も産業も、全てが快適になる空間を作り出しているピーエス。アイディア次第で新しい世界を開くことができるような、ワクワクした可能性に満ちていました。

ピーエスに興味を持った学生さんにメッセージ!

ピーエスでは、通年採用を行っています!文系理系問わず、大歓迎です。岩手県八幡平市の工場では、ピーエスの根幹である加湿器の開発・製造を行っています。ピーエス製品にワクワクする方、室内気候デザインに興味のある方からのご応募を、楽しみにお待ちしております!

■ピーエス株式会社
1960年創業。現在は温度と湿度の専門メーカー「ピーエスグループ」として、産業用加湿器や除湿型放射冷暖房用ラジエータの開発、製造、販売を手掛けています。コンセプトは「自然+PS」。地域ごとの気候を理解し、そこにPSをプラスすることで生産性の向上や健康的で快適な環境をデザインしています。

▼シゴトバクラシバいわてURL
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/80110010192110