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interview

こんな仕事があるのか岩手/01

洞窟探検がルーツ?「前人未到の地」へ行く仕事

「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。そんなわけで、今回紹介するのは一関市にある日本空糸株式会社(以下、日本空糸)の「ロープアクセス」を活用した橋やダム、道路などの調査・点検作業。知られざる仕事の世界をちょっとのぞいてみましょう。

ロープアクセスは、ロープを使って、人が入りにくい場所や高所を移動する技術のこと。洞窟探検のためにヨーロッパで発展した技術がルーツです。

日本空糸は、ロープアクセスを活用して北日本を中心に全国各地の橋やダム、道路などの調査・点検作業を行っています。

ロープアクセスは、洞窟探検のためにヨーロッパで発展した技術がルーツ。力学に基づいた技術で、高所などに安全に移動することができます

「高所作業車などが入れない場所に、人がロープを使って点検しに行く。老朽化しているところがないか、異常が出ているとしたらどんな状況になっているのか。それらの確認作業を通じて、防災に貢献しているのがこの仕事です」

と話すのは、日本空糸の代表取締役社長を務める伊藤 徳光さん(36)。防災の観点から、土木構造物の点検・調査を行っている日本空糸では、これまで高さのある橋や樹木の上、深さ50メートルの地下空洞などさまざまな現場の調査・点検を行ってきました。

一関市出身の伊藤さん。2015年に副代表の熊谷渉さん、妻の藤岡清里さんと3人で、日本空糸を立ち上げました

「特に地下が楽しいんです。高いところにいると、下から誰かに見られて目立つけど、地下にいると誰にも気付かれない。誰も知らない場所にこっそり潜っているのが個人的にすごく好きです」

伊藤さんの特にお気に入りの場所は、ダムの堤体の中。堤体とは、ダムの本体のことで、関係者以外が立ち入れないのはもちろん、そもそも人が通れることすらほとんど認識されていない場所。中を点検するための扉が壁面についているそう。

普段生活している環境と、人の目につかない場所の行き来を「『ドラえもん』のどこでもドア」や「『スーパーマリオブラザーズ』の土管」を使って移動しているようだ、と伊藤さんはいいます。たしかに、ふとダムの壁から人が出てきたらびっくりしますね。

「やっぱり、普通は行けない場所に行けるのが、この仕事の醍醐味。しかも、そこに点検や調査などのミッションがある。目的があるからこそ、仕事にやりがいを持って取り組めるなと思います」

ダムの堤体を調査しているときの様子。水が溜まっているときには見えなくなる場所も、仕事で訪れる現場のひとつ

一方で、高い場所や地下深くに行く作業はとても危険に見えて、怖さも感じます。実際のところはどうなんでしょうか?

「もちろん、まったくリスクがないわけではありません。怖さを感じるというのはすごく正常な反応で、なくしてはいけない大切な感覚だと思っています。怖さを感じるからこそ、安心・安全にできる対策を十分にした上でやりがいを持って、ロープアクセス技術を活用した調査・点検に臨むことができます」

また、この仕事の良さを「知識や経験がなくても誰もが始められて、地域に貢献できること」だと伊藤さんは話します。

「選ぶ仕事が、自分のそれまでの知識や経験からつながっている内容でなくてもいいと思うんです。不連続の領域に触れられるのが、この仕事の良さ。勇気を持って飛び込んだら、一から勉強できて、技術を身に付けることができる。僕はこの仕事を、『社会で活躍したい人』を送り出すひとつの手段だと思っているんです」

伊藤さんも、京都の会社でロープアクセスを活用した点検作業の経験を積んで、知識や技術を身につけていったそう

岩手の企業に入って活躍したい。そんな想いを持っている人にこそ、ぴったりな仕事だと思います。ぜひ興味のある人は、伊藤さんや日本空糸の皆さんとお話ししてみてください。

(取材時期:2023年8月)

■日本空糸株式会社
一関市に事務所を構える、日本空糸株式会社。ロープアクセス技術を活用した、橋やダムなど土木構造物の点検·調査のほか、高く伸びた樹木の伐採、ロープ高所作業の特別教育や災害救助訓練などの教育事業を行っています。「いわて働き方改革AWARD 2022最優秀賞」受賞。

▶︎日本空糸株式会社公式サイト
https://www.japansoraito.co.jp

▶︎シゴトバクラシバIWATE
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/91300010547340