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interview

こんな仕事があるのか岩手/04

たったひとつの地球と動物とヒトをつなぐ

「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。今回は盛岡市動物公園ZOOMOで、知られざる飼育スタッフのお仕事内容をインタビュー。副園長の村山淳(あつし)さんと、企画広報営業部の森敦子さんにお話を伺いました。

平成元年の開館以来、岩手県内外の来園者に愛され続けている盛岡市動物公園「ZOOMO」(以下、ZOOMO)。編集部がおじゃましたのは、開園時間前の動物公園。売店準備に園内の掃除など、たくさんのスタッフの方がキビキビと来園者を迎える準備をしています。

飼育スタッフのみなさんは、どんな仕事をしているのでしょうか? 飼育統括を務める村山さんに教えてもらいました。

「寝小屋にいる動物の状態確認から、一日は始まります。ごはんの食べ残しはないか、ふんの状態は正常かをチェックした後、手早く寝小屋を掃除。日中は飼育に加え、スタッフ全員で集まり、園内全ての動物のごはんを仕込んでいるんですよ」。

閉園後も休む暇はなく、「動物たちを寝小屋に戻して夜間のごはんを取り付けるまで、かなりタイトなスケジュールをこなしていますね」と村山さん。

また、動物の命を預かる現場では、事故防止に細心の注意が必要です。体が大きい動物とその危険度は必ずしも比例しないのだといいます。

「ライオンのように肉食の動物だけでなく、ニホンザルのように群れをなしてヒトに危害を加える可能性のある動物もいます。一方で、ニホンカモシカのようにデリケートな動物は、ストレスを感じて死に至る場合もある。その習性によって求められる飼育スキルはさまざまです」。

飼育スタッフはシフト制ですが、動物の世話は365日休みがありません。担当飼育スタッフが不在の際でも適切に対応できるよう、まんべんなく経験を積んでおく必要があるといいます。そのためZOOMOでは数年ごとに担当動物が変わる仕組みになっています。

アフリカゾウの足のケアは毎日欠かせない仕事。日本産動物、牧場、アフリカ・サバンナの3つのエリアで担当動物を飼育します

意外だったのは、飼育以外の作業が多いということです。

他園から預かっている動物の健康状態の報告や、栄養価の高い飼料の購入、イベントの企画・運営も飼育スタッフの担当です。常に来園者に正しい知識を伝えるため、日々アップデートされる動物の生態情報を勉強しておく必要があるのだそう。

地元・岩手に貢献したいとUターン、ZOOMOに動物飼育スタッフとして就職した村山さん。「昆虫採集クラブ」を開催し、子どもたちに自然や命を守る大切さを伝えています

健康管理をするためのトレーニングも、重要な仕事です。体重測定や採血は、動物たちにとって不自然な行為。強制ではなく、楽しく安全に行えるよう、笛を鳴らして合図をしたり、ごほうびをあげたり、工夫を凝らしながらトレーニングを進めているそうです。

一方、飼育歴22年の森さんは、「数年前までは、麻酔を打ったり捕まえたりするやり方でしか健康管理ができなかったんです。でも、現在のようなトレーニング方法を見つけていく中で、彼らにもちゃんと意志があって、愛情を受け取ってくれるんだということがわかりました」と話します。

動物の意思を尊重しながら行う飼育は、子育てをしているような感覚なのでしょうか? 

「子育てというよりは、動物たちは同僚のような存在ですね。お客様に楽しんでもらうための場所づくりをするという点では、私たちスタッフと動物は同じ立場。本来は自然界を生きる動物たちを、柵の中で飼育している。だからこそ、飼育スタッフとしてできる仕事を最大限にしていくことが、動物たちへの礼儀だと思っています」と森さんはいいます。

トレーニングを重ねたことで、動物と飼育スタッフ双方にとって安全な採血ができるようになりました

これまでに体験した、忘れられないエピソードを話してくれました。

人工保育が必要なアカカンガルーの赤ちゃんを担当することになった森さん。湿度と体温を保つため、勤務中はなんとリュックにカンガルーを入れて背負い、肌身離さず世話を続けたのだそう。献身的な看護の甲斐あって、無事に成長。公開された姿を見て、お客様は大喜びだったといいます。

「あの時のアカカンガルーを見た娘が飼育スタッフになりたいと言ってたんだよ、とお客様が話してくれて。動物とお客様をつなぐのが飼育スタッフの仕事なのだと実感できた出来事でしたね」。

「岩手の豊かな自然環境は貴重です」と話す森さん。飼育スタッフとして培った経験を活かし、現在は企画広報営業の立場からZOOMOの発展に力を注いでいます

今回のリニューアル工事では、ニホンツキノワグマの展示場にガラスパネルを設置するなど、動物たちをより間近に観察できるよう工夫されました。

「自分の目でじっくり見てこそ、目の前の動物のことや背景にある地球環境に想いをはせることができると思うんです。そのきっかけとなる体験を提供するのが、動物公園の役割」と力強く語る森さん。

最後に、今後思い描くZOOMOのビジョンをお聞きしました。

夢は「ZOOMOといえば、行くべき動物公園だよね!」と世界中の人に言ってもらえるような場所にすること。もっと多くの人に楽しんでもらうために、ワーケーションの場として活用することを提案したり、岩手の醸造所とコラボビールを開発してニホンツキノワグマの保全に役立てる仕組みを作ったり、動物公園の可能性を広げる試みにも挑戦しています。

自然環境と向き合い、地域に貢献する仕事がしたいと思っているそこのあなた。まずはZOOMOに遊びに行くことから始めてみましょう!

園内では無料wi-fiが使えるので、ワーケーションとしても最高なのだとか?! 自分なりの動物公園の使い方を見つけてほしいとお二人は話します
ツキノワグマに口を開けてもらうためのトレーニング。口の中を安全に確認することで、虫歯や歯の欠損などを見つけることができるのだそう
園内では動物が運動不足になることも。そんなときは飼育スタッフも一緒に園内を歩きます

ZOOMOに興味を持った学生さんにメッセージ!

ZOOMOでの仕事は、動物が本来どういった環境で暮らして自然とかかわりを持っているのか、また自然が私たちの暮らしに大きくかかわりを持っていることを、少しでも多くの方伝えていく意義のある仕事です。専門的な知識や経験がなくても、自然に対する興味や関心がある方であれば大丈夫です。飼育スタッフの募集については、欠員が生じた場合にのみ募集を行っています。そのため、4月採用でない場合が多いです。現在は募集の予定がありませんが、募集を行う際はZOOMOのHPやSNSでお知らせしますのでご確認ください。
盛岡市動物公園ZOOMO 副園長 村山淳

■盛岡市動物公園 ZOOMO
2023年4月「盛岡市動物公園 ZOOMO」としてリニューアルオープン。園内では65種300頭羽の動物たちと出会うことができます。 “人、動物、環境(生態系)の健康は相互に関連していて一つである”という考え方「One World-One Health」を理念に掲げ、野生生物の保全のみならず、自然環境の保全、人の福祉、動物の福祉(Animal Welfare)へ貢献するべく事業を展開しています。

■企業サイト
https://zoomo.co.jp