interview
2023/12/25 掲載
世界に推したい企業/03
「福祉=支援」という文脈で語られがちな福祉業界に、新たなビジネスモデルで挑む企業があります。アートを軸に、障害者に対する偏見やイメージを変えていこうとする、株式会社ヘラルボニー。岩手と東京の2つの拠点で活動する、彼らの挑戦について伺いました。
・「障害」のイメージを変容する
・「福祉×アート」で、福祉を起点に文化を創造
・モットーは『はじめの一歩はいつも岩手から』
障害のある方に出会った時、あなたはどんなことを感じますか。自分とはちょっと異なる雰囲気や言動を目にして、戸惑って躊躇する人もいれば、ネガティブな感情を抱く人もいるでしょう。
あなたも無意識に持っているかもしれない社会の偏見や先入観、障害のある方へのイメージを変容していくため、活動している会社があります。岩手に本社を置く、福祉実験カンパニー・ヘラルボニーです。
創業者の松田崇弥さん(32)と文登さん(32)は、双子の兄弟。4歳上の兄・翔太さんが重度の知的障害を伴う自閉症だったことから、自分たちと世の中の感じ方の違いに違和感を抱き、育ちました。
そんな彼らの転機となったのが、花巻市にある「るんびにい美術館」との出会い。知的障害のある方々のアート作品に衝撃を受け、そこに「福祉×アート」の可能性を見出したことが始まりでした。
作品として圧倒的にかっこいい!
そこには、「障害者」「健常者」の垣根はなく、作家としての強烈な個性がある。
そんな想いから掲げたのが、「異彩を、放て。」というミッション。知的障害のある作家とライセンス契約を結び、彼らのアート作品をさまざまな「商品」に変え、新たな文化を創出していこうと活動しています。
2018年の設立から、福祉業界のみならず、あらゆる業界との連携を拡大してきましたが、ヘラルボニーの今はどうなっているのでしょう?
一本のネクタイから始まったその活動は、作家のアートデータを軸に様々なモノ・コト・バショに広がっています。
異彩のアートをファッションアイテムやインテリアに落とし込み、ライフスタイルを彩るプロダクトとして発信する「ブランド事業」。DE&I(※)を基軸とした多角的な視点から、商品開発や空間演出、コンテンツ制作、研修プログラムなど、あらゆるコミュニケーション設計を提案し、課題解決に導く「ソリューション事業」。(2023年12月現在)
(※)DE&I:ダイバーシティ・エイクティ&インクルージョンの略。一人ひとりの違いや状況を尊重し、それぞれが活躍できる環境を公平に整備する概念。
「多方面に事業を広げているように見えるかもしれませんが、これらはあくまでも手段であり、入り口づくり。事業を通して、障害に対する社会の意識や構造を変えていくことが、私たちの目的なんです」と話すのは、岩手事業部の田村渓一郎さん(23)。
宮城県出身の田村さんは、ドバイの大学に留学後、インターンを経てヘラルボニーに入社。「福祉=支援」と捉えられがちな中で、営利団体としてビジネスを成立させていることが「たまらなくかっこいい!」と、ファンになったのだそう。
どうしても、福祉には「支援」という考えがつきまといます。お金が絡むことで、途端に嫌な顔をする人もいます。しかし、ヘラルボニーは敢えて、ビジネスとして成立させることにこだわります。
なぜなら、それが対等で当たり前のことであり、旧態然とした構造や意識を変えていく起点になるから。古い福祉の傘を外すことで、これまでにない挑戦ができると考えているのです。
(取材時期:2023年10月)
ヘラルボニーに興味をもった学生さんにメッセージ!
私たちが求めている仲間は、一過性の数週間を過ごす関係ではありません。ヘラルボニーという会社に共鳴し、時間をかけて、苦楽をともにする、そんな方と出逢いたい。そう考えています。新しい仲間との出会い、刺激的な日々をメンバー一同、心から楽しみにしています。
株式会社ヘラルボニー社員一同
■株式会社ヘラルボニー
福祉施設に在籍する知的障害のある作家とライセンス契約を結び、福祉を起点に新しい文化の創造を目指す企業として、2018年に設立。ライフスタイルブランド「HERALBONY」や他企業との共創による商品開発、まちやホテルの空間プロデュースなど、多岐にわたる事業を展開しています。
▶︎企業URL
https://www.heralbony.jp/