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interview

世界に推したい企業/05

馬の居場所をつくるウマい仕組みが岩手にあった!

家族の一員である馬の一生に寄り添いたい。馬への愛から生まれた事業は循環型農業を実現し、日本の競馬界を変えるかも!? 八幡平市で馬の居場所づくりに取り組むジオファーム八幡平に、設立の経緯や想いを聞きに行って来ました。

・これまでに無かった産業を創出
・循環型農業を通じて、最期まで馬に寄り添う環境づくり
・引退競走馬の居場所を全国につくることを目指している

「ジオファーム八幡平」の代表・船橋慶延さんは、馬とともに生きてきた人。八幡平に来る前は、馬産地である北海道で、競走馬の育成をしていました。移住のきっかけは東日本大震災。八幡平にあった知人の牧場を支援しようと、6頭の馬とともに来県します。

「自分の馬は家族のような存在なので、最期まで面倒を見たいと思っていたんです。移住する前は、観光需要があるかもしれないと思っていたのですが、それでは継続できなくて。どうすれば馬たちが自分たちの力で食べていけるかを考えました」と船橋さん。

試行錯誤しながら生まれたのが、馬厩肥(ばきゅうひ)を活用し、マッシュルームを栽培する事業でした。

ホワイトとブラウンを育成。身が締まって歯応えがあり、日持ちするという評価を受けています

馬厩肥とは、馬の寝床の敷き藁と馬糞が発酵して生まれる堆肥のこと。

始めてみると、実はフランスで人工栽培の手法が確立されたマッシュルームは、馬厩肥で育てられていた歴史があることがわかります。

そもそもマッシュルームは藁の培地でないと育たない作物。馬糞がその発酵を促進させより良い生育環境をつくっているそう。

「マッシュルームがたくさん売れることで、馬のベーシックインカムが上がるので、敷き藁をもっとフカフカにして快適な生活環境をつくってあげることができます」と船橋さん。

藁に広がる菌糸

廃棄される菌床は、八幡平市の酒蔵「わしの尾」で酒米栽培の肥料として活用されるなど、馬の自活のための試みが、結果的に循環型農業を実現。数年前からは麦の栽培を始め、将来的には敷き藁の栽培から培地づくりまで、すベて自社および八幡平地域でできる環境をつくろうとしています。

こうした取り組みは、全国的にもめずらしく、視察が訪れるほど。

なぜなら、船橋さんによれば、日本は世界一馬券が売れている国でありながら、引退した競走馬のアフターケアは諸外国に遅れをとっていて、改善が望まれているからです。

最近は、JRA日本中央競馬会の支援によって開催される、引退競走馬だけが出場できる馬術競技「RRC(Retired Racehorse Cup・引退競走馬杯)」などの盛り上がりも広がりつつあるものの、まだまだ引退後の用途変更としては一部で、屠殺、殺処分となる馬が多くいるのだそう。

日本中にいる、そうした馬たちの居場所を整えていくことが、今後の船橋さんの目標。

八幡平市に留まらず、全国の競馬場や乗馬クラブなどのそばに、最小の馬の頭数で循環型農業を実現するマッシュルームファームをつくり、馬が一生を過ごせる場所がたくさん生まれる未来を思い描いています。

船橋さんは今年、自身の馬と、馬のセカンドキャリアの場として注目されているRRCにも初出場

(取材時期:2023年11月)

ジオファーム八幡平に興味をもった学生さんにメッセージ!

馬術部の学生さんに積極的にエントリーしてもらいたいです。社会人になってピタッと馬から離れてしまうのはすごくもったいない。馬が好きという方に、こうして馬のいる環境でぜひ仕事をしてもらいたいなと思います。

■ジオファーム八幡平
馬×地域資源をベースとしたサスティナブルな農場を目指し、馬厩肥を活用したマッシュルームを生産。グループ企業の「グレイトフルホースファーム」で現役の競走馬も育成しています。