interview
2023/11/27 掲載
100年前からある仕事/02
塗師、鉄器職人、染物師など、岩手には数百年前から変わりなく受け継がれている仕事がたくさんあります。ここでは、時代の変化に合わせながらも、伝統の技を大切に守り、継承してきた職人たちの仕事をフィーチャー。岩手の手仕事に精通した「百年仙人」が案内します。
今日は一関市で1918年に創業した京屋染物店を紹介したい。手ぬぐいや半纏などを手がけ、地域の祭りや郷土芸能を支えている老舗だ。
染工場へようこそ。当社では、「藍染」や、ハケを使用する「引き染め」、生地全体を同じ色に染める「浸染(しんぜん)染め」などを行っていますが、今から「手捺染(てなっせん)」で半纏を染めるところをお見せします。
手捺染。手の力で染料を布の細部にまで浸透させる技法だな。
生地の裏まではっきり模様が出ます。均一に染めることができて、手ぬぐいのように裏表関係なく使用できるものに適していますよ。
滲まないよう、粘度のある染料を使います。重量があるので、ふたりひと組で、ムラが出ないようにヘラで生地に染料を押し込みます。
力加減やスピードを合わせるのは職人技だな。
染めた後は、張手(はって)と呼ばれる道具で生地を張り上げ、乾燥させます。昔から変わらず使われている道具です。
京屋染物店では20代がたくさん活躍していると聞く。大学などで染めの勉強をしてきたのかな?
入社してから学びました。僕は入社3年目ですが、仕事を任せてもらえるのも、うちらしさだと思います。若くてもいろんなことに挑戦させてもらえる機会があって、僕はワークショップを企画して、一般の方に染めの魅力を伝える取り組みをしています。
入社のきっかけは?
小さい頃からダンスをやっていて、大学では郷土芸能の衣装が生まれた背景や歴史を学んでいました。いつしかそれをつくる側になりたいと思うようになり、全国の工場を調べる中で、新しいことに挑戦している社風に惹かれました。
どんな人が向いているだろう?
向き不向きは、あまりないと思います。この子たち(道具や布や染料)が優秀なので、職人に合わせて仕上がってくれるんです。ただひとつ、大事かなと思うのは、片付けができる人。道具を元ある場所に戻す。朝、前日と同じ状態になっていることで、毎日同じ動きができて、それがミスを起こさないために大切なことなんです。
先人から受け継がれた道具も多い。この場所に自分のものはひとつもないのだな。
最後に、やりがいを感じる時を教えてほしい。
染直しのご依頼をいただいた時ですね。色褪せたものを見ると、使ってくださっていたんだなとか、ちゃんとその人の家の中にあったんだなと感じて、すごくうれしくなります。染めを失敗してしまうとその生地は捨てなくてはならないですが、僕らがちゃんと綺麗に染めれば、お客様に何十年も愛されるものになる。そこに責任とやりがいを感じています。
素晴らしいの~。今年はコロナを経て地域の祭りが復活。半纏や手ぬぐいを身につけた人たちをたくさん見られて私もうれしい気持ちになった。
京屋染物店は、自社ブランドを開発したり、古民家を改装したショップもオープンして、地域の暮らしの文化を発信するなど活躍の場を広げている。
地域、いや、世界の中でこれからどんな存在になっていくのか、今後の展開が楽しみだ!
(取材時期:2023年10月)
京屋染物店に興味をもった学生にメッセージ
京屋染物店に興味を持ってくださりありがとうございます。
京屋染物店の店舗である「縁日」では北の文化や暮らしを再編集しながらセレクトショップを運営し、定期的にイベントを開催しています。
染めはもちろん、地域文化に興味のある方はぜひお越しください。
株式会社京屋染物店 人事採用担当 庄子さおり
■株式会社京屋染物店
1918年創業の染物屋。全国でも珍しく、デザインから染め、縫製までを一貫して行っています。郷土芸能や祭りを支える半纏や浴衣のオーダーメイドを受け付けるほか、自社ブランドen・nichiを展開。2023年にはものづくりの発信拠点としてセレクトショップ「縁日」をオープンしました。
▶︎企業紹介|シゴトバクラシバIWATE
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/84005010009700