interview
2023/12/4 掲載
こんな仕事があるのか岩手/02
「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。そんなわけで、今回紹介するのは三陸鉄道株式会社。私たちを安全に目的地へと運んでくれる「運転士」の仕事の様子をちょっとのぞきに行ってきました。
岩手県の三陸沿岸、盛(さかり)駅(大船渡市)から久慈駅(久慈市)を結ぶ三陸鉄道リアス線。
車窓からの絶景や、NHKの連続テレビ小説『あまちゃん』の舞台になった列車としても知られています。
そんな三陸鉄道の運転士には、どうやったらなることができるのでしょう?
宮古市にある運行本部で運行本部長の金野淳一さんと、2022年に運転士デビューした成瀨賢紘(なるせたかひろ)さんにお話をうかがってきました。
三陸鉄道の路線図はこちら!
三陸鉄道には、総務や経理などを行う「事業本部」、線路や信号のメンテナンスを行う「施設本部」、車両の運行を担う「運行本部」があり、運転士は運行本部に所属しています。
「三鉄(さんてつ:三陸鉄道)はほかの鉄道会社と比べても珍しく、運転士が車掌業務も、営業も、車両点検も担うので、広く知識をもってもらうためにみんな”運転士候補生“として入社してもらいます」と金野さん。
入社試験では「運転適性検査」を突破する必要がありますが、入社前に必要な資格や経験はないのだとか。
現在、運転士は20代が最も多いそうですよ!
最初の仕事はメディア対応。同社の入社式はさまざまなメディアに取材されるため、入社初日から会社の顔としてテレビ出演などが待っているそう。これも大事な営業の仕事ですね。
入社後は、研修が始まります。
運転士になるには国家資格が必要。年に2回実施される学科試験・実技試験を経て、さらに社内訓練と試験に合格したら晴れて運転士の仲間入りです。
最短で1年半。研修は掃除に始まり、接客、車両の運行、列車の連結や切り離しの実践などその内容は多岐に渡ります。
試験を受ける頃には体感で速度がわかるようになり、速度計を見ずに始発から終点まで走れるようになるとか。
大変な道のりではありますが、開業から40年間、国家試験に落ちた社員はほとんどいないそう。万全なサポート体制が整っていることがわかりますね!
日々心がけていることは「安全第一」。「お客様の命をお預かりして運転をしているので、責任感のある人が向いていると思います」と成瀨さん。
金野さんは、「お客様が下車される時に声をかけるような、明るさも大切ですね」と話します。
同社は、切符や運賃を運賃箱に入れてもらうのではなく、お客様から手渡しで受け取ることを開業以来ずっと続けてきたそう。
「たとえば乗車してすぐに運賃を払おうとするおばあちゃんがいます。本来は下車時に運賃をいただくんですが、我々もその人がどこで降りるかわかっているので、『先にもらっておくよ』と言うことがあったり、財布を渡されることもあります(笑)。『細かいのわがんねぇから財布からとってけろ』って言われて、『運賃の何百何十円もらうからね』と言ってお財布を返す。そのくらいお客様との距離が近いんですよ」と金野さん。
海から川への鮭の遡上を見られる「安家川橋梁」や三陸の美しい海を望める「大沢橋梁」は三陸鉄道の自慢。日中は乗客が景色を満喫できるよう速度を落として運行します。
成瀨さんもトンネルとトンネルの間から一瞬だけ見える海の景色が好きだそう。
「毎日乗っていても違いがあるんですよ。天気や時間で海の青さが変わりますし、日の出とともにオレンジ色に染まっていく太平洋も美しいです。そうした見どころを車内放送などを通じてお客様にお伝えしていきたいです。」
三陸鉄道の運転士は、三陸の暮らしを支えると同時に、魅力を伝える役割も担っています。
(取材時期:2023年11月)
三陸鉄道に興味をもった学生さんにメッセージ!
鉄道の仕事は、運転士、車掌、駅員などが活躍していますが、毎日時間通り安全に列車を走らせるためには、線路・電気・車両等のメンテナンス、多くのお客様においでいただくための営業など、さまざまな職種が支えています。こんな仕事に興味のある方、ぜひ一緒に働きましょう。
三陸鉄道株式会社運行本部長 金野淳一
■三陸鉄道株式会社
1984年に全国初の第三セクターとして南リアス線(盛~釜石)、北リアス線(宮古~久慈)を開業。2011年、東日本大震災による大きな被害を受け全線運転不能となりましたが、2014年に全線復旧を果たします。2019年にJR東日本より山田線(宮古~釜石)が移管。盛~釜石~宮古~久慈間163kmが三陸鉄道リアス線となりました。
▶︎企業紹介|シゴトバクラシバIWATE
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/94000010007100