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2025/6/30 掲載
勝手に業界研究/05

メーカー、流通・小売、金融など、いろんな業界があるけれど、岩手の業界事情って実際どうなってるの? そんな疑問にお答えして、編集部が独自にリサーチする「勝手に業界研究!」。今回は「建設業界」をフィーチャーします!

この間、家族で盛岡から宮古までドライブしてきたんですけど、片道1時間半で行けちゃうんですね~。「昔は2時間かかったのに」って、両親も驚いていました。

宮古盛岡横断道路(国道106号)のことだね。あの道は険しいカーブも多かったから、トンネルを通したことで運転も楽になったよね。

三陸エリアとの距離がグンと近くなった気がします。震災の津波で道路や港も破壊されて、まち全体が被害を受けたところもあったから…。復興工事を目にするたびに、建設業界での仕事に興味を持つようになりました。

津波で甚大な被害を受けた宮古市田老。新しい道路をはじめ高台には住宅が再建されています

私たちの暮らしを支えてくれる、なくてはならない仕事だよね。建設業界は大きく2つに分かれていて、道路やダム、鉄道などのインフラを作る土木分野と、住宅やマンション、ビルなどの建築物をつくる建築分野があるんだ。

大手ゼネコンのことはよく見聞きしますけど、業種もいろいろあるんですか?

ゼネコンは総合建設業者のことで、商業施設やテーマパークといった大型建築の工事一式を請け負って、設計・施工・研究のすべてを自社で行う会社。
他にはサブコンといって、一部の専門的分野を担う会社もあるよ。電気や空調などの各種設備工事、工事に必要な足場を組むとび工事などがそれにあたるね。
あとは、港湾・護岸工事など海洋土木に特化した建設会社や、都市開発やリゾート開発などを手がけるデベロッパーと呼ばれる不動産会社、ハウスメーカー、工務店、設計事務所といった業種もあるよ。

建設業界といっても、専門分野によって業種もいろいろ分かれているんですね~。

国や自治体の公務員になって、土木・建築の専門職として働く道もあるよ。公共工事の取りまとめ役となって民間企業と連携して進めたり、建築物の建築や維持管理、法令管理、まちづくりの計画といった仕事にも携わるそうだよ。

沿岸各地で行われていた復興工事は、まさにそれですね!

そうそう。当時は全国の自治体から応援職員が駆けつけて、岩手の復興工事を支えてくれたんだ。なかには複数年も岩手に滞在して、サポートしてくれた職員さんもいたらしいよ。

三陸の人たちが安全に暮らせるようになったのは、そういう方々の力添えがあったからなんですね~。

野田村前浜地区の防潮堤。復旧工事によって14メートルに嵩上げされた防潮堤が海岸沿いに続いています

こうした工事には、さまざまな職種の人たちが関わっているんだ。工事の予算管理から資材発注、施工計画などを一手に担う「施工管理」。意匠・構造・設備などを設計する「設計」。新しい建築技術や素材などを開発する「研究・開発」。デベロッパーにおける都市開発や、ハウスメーカーで住宅商品などを手がける「企画・開発」。そして、自社の技術や商品を売り込む「営業」があるよ。

なるほど~、いろいろあるんだな。やっぱり土木や建築といった分野を専門的に学ばないとダメですよね?

大学で専門的な知識を学ぶことが必要な職種もあるけど、例えば「施工管理」などは就職してから勉強と経験を重ねて資格を取り、業務に携わることもできるよ。
県内の建設会社の多くが、社員の資格取得をバックアップする環境を整えているから、やる気さえあれば大丈夫!

働く環境といえば、建設業界でも働き方改革が進んでいるんですよね。

2024年から「働き方改革関連法」が適用されたこともあって、労働時間や休暇制度など働く環境の改善に取り組んでいる企業が多いよ。
岩手では女性たちで組織する「けんせつ小町部会」が中心となって、女性だけでなく誰もが働きやすい建設業界を目指して、さまざまな取り組みを進めてるんだって。

建設業界で注目が集まる女性の活躍。岩手県内でも誰もが働きやすい環境づくりが広がっています

最近は、建設業界で活躍する女性も増えているんですよね。トイレや更衣室の設置とか、育休も男女ともに当たり前に取れるとか、大事だと思います!

建設業界は、人手不足や若手人材の育成の遅れが課題になっているから、働きやすい環境づくりは必須だよね。
その一方で、生産効率を上げるために、デジタル技術も積極的に導入していて、ICT(情報通信技術)施工やドローンを活用した調査・測量など、現場の働き方改革も進んでいるそうだよ。

へえ、想像以上に現場もデジタル化しているんだ。任せられるところはテクノロジーに振って、人手不足を補うわけですね。

ドローンを使った測量の様子。工事現場の生産性を向上するためDX化が進行中

その通りだよ。最新技術の導入によって働き方も進化しているわけだけど、担う役割も変わってきているんだ。
近年は、気候変動による大雨や台風など、毎年のように自然災害が起こっているよね。また、高度成長期に整備したインフラの老朽化も問題になっているみたい…。
生活基盤を整えるだけでなく、災害に強いインフラ、100年先も持続可能なインフラを想定して整備していく必要があるんだ。

なるほど~、次の世代にも関わってくるから責任重大だな。でも、だからこそやりがいがあるともいえますね。

岩手は復興工事もほとんど終わって次のフェーズに入っているし、職場環境の改革も進んで働き方・生き方も変わってくる。
だけど、多くの人の命と暮らしを守る建設業の使命は、変わらない。しかも、自分が手がけた建造物がずっと残るって素敵だよね。

「地図に残る仕事」って、キャッチコピーもありましたね~。「あの橋を手がけたんだよ」って、子どもたちに誇れる仕事ができたらかっこいいかも。