interview
2026/1/6 掲載
ススム働き方改革/20
社会福祉法人カナンの園は、知的障がいのある子どもから成人、高齢者までを対象に、幅広い福祉事業を行う団体です。障がいを持つ人々が施設内だけで生活や就労を行うのではなく、地域社会の中で自立した暮らしを送るための取り組みを大切にしてきました。
主な事業内容は生活や就労の支援、利用者の家族からの相談支援など。奥中山地区・盛岡地区で、生活支援は子どもの施設と21のグループホーム、就労支援などは6つの施設、地域生活を支える訪問介護や相談事業を運営し、法人全体で209名の職員が働いています。
課題となっているのは、職員の高齢化が進み、若手の人材が不足していること。多様化する職員の働き方に合わせ、「生活と仕事の両立を支える職場づくり」をモットーに進める働き方改革について、カナンの園事務局の笹森雅弘さんにお話をうかがいました。
生活の「困った」を徹底サポート!
入居型の生活施設では、24時間体制で利用者を見守る必要があります。これまでは子育てや介護など、やむを得ない事情で欠勤者が出た場合には、別の職員が振替勤務をすることもあったといいます。
現在は管理職も含めた職員で柔軟なシフト体制を組むなど改善されていますが、年度内で消化しきれなかった有給休暇は失効してしまうという事態が多く見られていました。
そこで、「失効年次有給休暇積立制度」を創設。通常は2年で失効する有給休暇を積み立てることができ、パートや臨時職員など、どの雇用形態にある職員でも通院治療や家族の介護の際に使用することができるようになりました。
創設のきっかけは、40代の職員ががんの診断を受けたことでした。抗がん剤治療を行った場合には、副作用でしばらく体調不良が続くことも。現在もその職員は、この制度を使い業務量や勤務シフトを調整しながら、治療とフルタイム勤務を両立しているといいます。
その他にも、業務災害総合保険に加入し、法人独自の傷病休暇や積立年次と併せて受給することができるため、万が一の場合でも給与の満額支給が可能な仕組みになっています。
こうした制度は全職員に「活用ガイドブック」を配布することで周知。制度の利用が定着するとともに、互いの事情に配慮しながら働くという雰囲気づくりにつながっています。


大きな病気やケガなど、予測できない事態にもこうした経済的サポートがあると安心して働くことができますね。
福祉の世界で働きたい!
志を持った若者を支援
岩手県内だけでなく、全国的な課題となっているのが、福祉現場の人手不足です。カナンの園でも、積極的に若手の人材確保に乗り出しています。
その一つが「奨学金返還支援手当」の設立です。奨学金を返済しながら働く若手職員をサポートする制度で、毎月最大で1万5千円を法人が代理返還するというもの。経済的な負担を減らすことで将来設計を立てやすくし、プライベートと仕事の両立を実現してもらうことが目的です。
さらに、若い世代にも障がい者支援に関心を持ってもらうため、インターシップを随時受け入れ。福祉とは異なる分野の学科に通い、行政職員など異業種を目指す学生でも、「福祉の現場と地域のつながりを学びたい」といった希望を受けて対応したケースもあるといいます。


経済的な制約が減ると、より広い視野でキャリアパスを描くことができるようになるのではないでしょうか。
現場をシャッフル!?
スタッフ間の相互理解を大切に
児童入所施設や就労支援施設、グループホームなど、さまざまな形態の支援を行うカナンの園。その職種も生活や作業の支援員やヘルパー、相談支援専門員など多岐にわたります。
「障がい者支援には明確な正解がないからこそ、日々の出来事など、職員間でこまめに話し合うことを大切にしている」という笹森さん。一方で、施設が岩手県北エリアや盛岡市内に点在するため、他施設の職員と顔を合わせて話す機会が限られているのが現状です。
そこで、職員から「自分が働いている施設以外の支援内容も把握し、施設間のコミュニケーションを図っていきたい」という意見が出たことをきっかけに、今年の10月から数日間、希望者は異動して働くことができるプログラムを実施予定なのだそう。
「法人内で4か所ある同じ生活介護の仕事といっても、施設ごとに利用者の障がいの重さや支援の内容は異なります。新しい取り組みが個人のスキルアップ、そして施設全体の支援サービスの向上につながれば」と笹森さんは期待します。


横のつながりが増えると、法人全体が一つのチームとなって支援事業をしているという意識が高まり、仕事へのモチベーションにもなりますね。

より良い職場づくりが、より良い支援につながっていく。その信念に基づき、働き方改革に取り組むカナンの園。積極的にインターシップの受け入れや岩手県内の企業説明会に参加しているというお話からは、障がい者支援に携わる人材の確保に尽力していることが伝わってきました。
(取材時期:2025年9月)
カナンの園に興味を持った学生さんにメッセージ!
皆さんの関心・優しさと行動が、彼らの人生を大きく変える力になります。支援を「してあげる」ではなく、「一緒に歩む」ことです。カナンの園での出会いは皆さんの成長に繋がり、彼らは大きなギフトをくれます。

■社会福祉法人カナンの園
1972年創立。岩手県県北地方、盛岡市内を中心にキリスト教の理念に基づき福祉事業を展開。知的障がいをもつ子どもたちが入所する「奥中山学園」や就労継続支援A型事業所「カナン牧場事業所」などを運営し、利用者一人ひとりのライフステージに合わせた生活・就労・相談支援を行っています。利用者が製造するふわふわ食感のパンやせんべい、羊毛を使った小物商品などは、長年地域の方々からも愛され続けています。いわて働き方改革AWARD2021優秀賞受賞。
▶シゴトバクラシバいわて
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