interview
2025/7/15 掲載
ジャジャーン!自慢プロダクト/10

普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回登場するのは、北上市の岩手製鉄株式会社が開発した「ダクタイルパン」。画期的な性能を持つこの製品をどのように実現したのか、営業を担当する高橋哲平さんに聞きました。
料理好きな人からプロのシェフまで、多くの人に愛用されている「鉄のフライパン」。これには、大きく分けると「プレス(鍛造)」と「鋳造」の2種類の製造方法があることを知っていますか?
鋳造とは溶かした鉄を型に流し込んで作る製造方法で、「鋳物(いもの)」と呼ばれます。身近なものでいえば、南部鉄器やマンホールの蓋がそれに当たりますね。
鋳物のフライパンは頑丈で蓄熱性が高いのですが、重くて扱いにくく、錆びやすいので手入れが大変なのが難点。そんなデメリットを解決したのが、岩手製鉄の「ダクタイルパン」です。


想像以上に軽くて驚きました!フライパンを振るのが楽しくなりそう。

他の鋳物に比べて約半分以下の薄さですから、「鉄製のフライパンなのに軽い」と好評です。女性やお年寄りでもラクに扱えるんですよ。

どうして半分の薄さ・軽さを実現できるんですか?

その秘密は、球状黒鉛鋳鉄とも呼ばれる「ダクタイル」にあります。これは一般的な鋳物より強靭なのですが、製造が非常に難しいんです。私たちは1,000回以上のトライ&エラーを繰り返しながら、その難題を克服。独自の「ダクタイル薄肉化(うすにくか)技術」を開発して、従来の鋳物製品の約半分の「薄さ」「軽さ」を実現したんです。完成にこぎ着けるまで3年かかりました。


なんと3年も!? 相当な苦労があったんじゃないですか?

薄い鉄を作るって、不良品との戦いなんです。最初の頃は、途中で鉄が固まらずに穴が空いたり、100個作って全部ダメだったり、失敗の連続で……。現場の社員たちが挫けず、粘り強く、一つひとつ課題を克服してくれたおかげで実現できたんです。

諦めない気持ちから生まれた製品なんですね。他にはどんな特徴があるんですか?

表面に凹凸があるので油がよくなじみ、少ない油でも焦げつきません。それに、鉄自体に錆びにくい処理を行っているので、従来の鉄のフライパンと違って洗剤も使えますし、洗った後に油を塗っておく必要もないので、お手入れがとてもラクなんです。


軽くて、焦げつかず、手入れも簡単なら、人気が出るのも頷けます。

鋳物のフライパンが重いのは岩手じゃ常識ですが、県外の人は鋳物そのものを知らないんです。だから最初は「全然軽くないじゃないか!」って怒られたりして(苦笑)。でも製品の良さを実感してくれた方がYoutubeやSNSで発信してくれて、注目されるようになりました。今では外国の方もお土産として買ってくれるんですよ。

インバウンド需要も高まっているんですね。

これまでは国内がメインでしたが、今後は韓国や台湾、中国など、東南アジアを中心に海外にも売り込んでいく予定です。2025年の夏には、世界が驚くような新製品も発表しますので楽しみにしていてください。

長年、磨き上げてきた鋳造技術をベースに、従来の鋳物製品の常識を覆す「ダクタイルパン」を開発した岩手製鉄。そこには、「世の中にないものを造ろう」と製品開発に取り組んできた職人たちの想いと、失敗しても諦めず、コツコツと改良を続ける地道な努力がありました。
(取材時期:2025年6月)
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■岩手製鉄株式会社
戦後日本の復興を地域経済の発展とともに支えたいという想いから、1949(昭和24)年に製鉄業をスタート。1994(平成6)年から工業用の鋳物製品の製造へと事業転換し、現在は鋳物事業部・エンジニアリング事業部・鉄器事業グループの3部門を展開。長年にわたって磨き上げられた製鉄・鋳造技術を軸に、積極的に工場のオートメーション化も図りながら、付加価値の高いものづくりに取り組んでいます。
■シゴトバクラシバいわて
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