みんなの想職活動

interview

2025/3/12 掲載

岩手で仕事はじめました/11

マーケティングの力で地域をもっと面白く

岩手出身でUターンした人、県外からIターン・Jターンした人など、岩手で働き始めた社員さんをご紹介!今回は、マーケティング活動の伴走支援事業を手がける東京本社のサテライトオフィスとして2021年に住田町に営業所を開設し、その後2023年に法人化された「株式会社ビーアイシーピー・ハナレ」代表取締役の伊藤美希子さんにお話をお聞きしました。

伊藤さんは神奈川県のご出身で、東京でマーケターとして働いていたんですね。岩手に来たきっかけは?

東日本大震災の仮設住宅支援に関わり始めたのがきっかけです。震災後、学生時代の先輩が任意団体「邑(ゆう)サポート」を立ち上げ、住田町の仮設住宅内のコミュニティ支援に取り組んでいることを知り、私はボランティアとして参加しました。その後、邑サポートのメンバーになり、団体としてより地域の課題に取り組めるようにと一般社団法人化する際、私も理事に就任することになりました。

ビーアイシーピー・ハナレのオフィスがある世田米商店街にて撮影。「コーヒーとドーナツの美味しいカフェや大判焼き屋さん、美味しい町中華など、いろんなお店があって面白い商店街ですよ」と笑顔で話す伊藤さん

住田町では、どんな活動をしていましたか?

仮設住宅で暮らす方々の交流会サポートや、外から訪れるさまざまな支援団体やボランティアのコーディネートを行うことが多かったですね。「こんな企画を被災地でやりたい」と支援者から提案があった際に、その企画が仮設住宅で暮らす方々のニーズに合っているかどうか、大事にしながら調整を行っていました。月1回通っていた私は、特にフラワーアレンジメント教室やお茶会などを企画して、仮設住宅の皆さんが交流する機会をつくりました。

当時の伊藤さんから見て、住田町の印象はどうでしたか?

自然と輪の中に入れてくれる、オープンで寛容な町だなと思いました。住田町の方々は本当にあたたかくて、私のような外から来る人間を面白がって受け入れてくれたんです。「伊藤ちゃん、次はいつ住田に来るの?」って言ってもらえるのが嬉しくて、住田町ともっと関わりたいと思うようになりました。
当時は東京で働いており、長期間の滞在は出来ないことから部分的な活動になっていたと思います。平日は東京の会社でマーケティングの仕事、週末前に住田町に移動して活動して、そしてまた東京に帰っていく…という生活でした。

仮設住宅で開催したクリスマスリースづくりのワークショップの様子。地域の方々に教えてもらい、山から藤のツルを取ってきて、それらをリースづくりに使ったのだそう

東京と住田町の2拠点生活は、大変ではなかったですか?

不思議なことに、大変だとは感じませんでした。住田町まで行くには、東京駅から水沢江刺駅まで新幹線に乗って、そこから更に車で峠を越えて行くので、当時暮らしていた家から片道5時間かかります。それでも、東京で働いている仕事から住田町での仕事へと切り替えるのに必要な時間でしたし、住田町で活動するのが楽しみだったので、移動時間は苦ではありませんでした。

都市と地域、全く違う環境だからこそ、移動時間での切り替えが大切だったのですね。現在は住田町に拠点を移していますが、どんな経緯があったんでしょうか?

もともと私は、ビーアイシーピー・ハナレの親会社であるベストインクラスプロデューサーズ(BICP)の社員として、東京で働いていました。2018年に住田町で働く夫と結婚しましたが、住まいは別々の別居婚という形を選択をしました。その後、コロナ禍で東京との行き来が難しくなり、住田町に生活の拠点を移してリモートワークをしていたんです。

リモートワークはとても便利でしたが、ほぼ東京の仕事のみになっていることに気づきました。住田で活動したくて通っていたのに、いざ住んでみたらあまり時間が割けていない。さらに、私の専門分野はマーケティングなのに、そもそもそれを住田で活かせていないのではと思ったんですよね。

そのことを会社に相談したところ、ならば住田町にサテライトオフィスをつくろう!という話になりました。ありがたいことに、2020年にBICP住田オフィスを開設することができました。

社名のBICPは「ベストインクラスプロデューサーズ」の略称。「マーケティングの力で、人生を楽しめる人を増やす。」というビジョンを掲げています

伊藤さんの行動力も、会社の寛容な姿勢もすばらしいですね!住田オフィスができてからは、どうでしたか?

オフィスを通りがかった方から「ここって何屋さん?」と聞かれたり、マーケティングができる人が住田町にいるらしいと訪ねていただいたりと、嬉しい反響がありました。公民館の高齢者教室に呼んでいただいたマーケティング勉強会の様子や、住田町商工会での勉強会の様子が新聞に掲載されたことをきっかけに、少しずつですがご相談をいただくようになりました。

マーケティング思考は都市部だけではなく、住田町のような地域にも必要です。少子高齢化や労働人口の減少など、さまざまな問題がありますが、それらに対して、マーケティング思考でどう解決できるのか、これまでのノウハウを活かして関わっていきたいと考えています。

これまでお世話になってきた住田町に、邑サポートで携わってきた地域づくりだけではなく、マーケティングを活用して携われることを嬉しく思っています。行政や教育機関、マーケティング部門を持たないような中小企業に対して支援する体制をより強化していくために、2023年に分社化する形で「ビーアイシーピー・ハナレ」を設立しました。引き続き、BICPを通じて都市部のクライアントの支援も行いながら、地域のマーケティング支援をスタートさせています。まだまだ道半ばですが、都市部で得たノウハウを地域に、地域で得たノウハウを都市部へと、地域と都市をつなぐ役割を果たしていきたいと強く思っています。

「ビーアイーシーピー・ハナレ」の代表取締役であり、まちづくり活動を行う「邑サポート」のメンバーとしても活動している伊藤さん。「二足のワラジスト」として、これからも活動していきたいと話します

住田町での暮らしで、気に入っていることはありますか?

友人が経営するカフェラテの美味しいカフェや新鮮なお魚が食べられる飲み屋さんなど、歩いて行ける距離にお気に入りの場所があること。そして、個性的な仲間や人生の先生がたくさんいることです。よく、地方は閉鎖的なのでは?なんて思われることもあるようですが、それは全く感じません。もともと宿場町だったこともあって、新しく来た人の出入りを受け入れる風土があるような気がしています。

また、住田町の山あいを流れる美しい気仙川を、ボーッと眺める時間もお気に入りです。デスクワークが多いので、気分転換に散歩がてら川を眺めに行きます。その風景を見て、豊かだなぁとしみじみ感じています。

気仙川に架かる流れ橋「松日橋」。住田町の豊かな自然を感じられる、伊藤さんのお気に入りの風景です

素敵な暮らしですね!最後に、伊藤さんの今後の目標を教えてください。

今の事業で多くの方の課題に寄り添うためにも、地域でマーケティングに携わる人財を育成していきたいと考えています。これからマーケターを志す方や、この記事を読んで興味を持った方がいたら、嬉しいですね。

もう一つは、私個人の願望なのですが、いつか雑貨屋さんを開いてみたいという思いがあるんです。誰かへのプレゼントを買いたいと思った時に、プレゼントを買う場所がなくて。それなら、オフィスの一角で、素敵な雑貨が買えて、ギフト用にラッピングもするお店をつくれたら面白いなと思っています。ちゃんと事業化できるように計画しないとですね…(笑)この町をどんどん面白くする取り組みができたらいいなと思います。


(取材時期:2024年11月)

ビーアイシーピー・ハナレに興味を持った学生さんにメッセージ!

迷いの多い学生時代、「無駄だと思うことこそ意味がある」、「目の前のことを大事にする」という言葉に励まされ、いつも背中を押してもらいました。悩むことは多いと思いますが、感性を大事に、自分の枠を決め過ぎず、進んでいってください。いつでも住田に遊びにいらしてくださいね!

■株式会社ビーアイシーピー・ハナレ
株式会社ベストインクラスプロデューサーズ(BICP)の住田オフィスとして2021年に開設し、2023年7月に分社化・設立。社名の「ハナレ」には、母屋であるBICPの「はなれ」、これまで東京で培ってきたノウハウの型を活かしつつも、そこから離れて、独自の型で成長を目指すという「離れ」、また、関わる活動が花のように咲きますようにという思いが込められています。「マーケティングのちからで、地域をもっと豊かに。」というビジョンを掲げ、地域と都市部のクライアントを対象としたマーケティング戦略の伴走支援および地域人材の育成を目指し、地域の課題解決に取り組んでいます。

■Webサイト
https://www.hanare.bicp.jp