interview
2024/11/25 掲載
こんな仕事があるのか岩手/08
「地方は仕事が少ない…」と思っているとしたら、それ、誤解です。岩手には意外な職種や面白い仕事がいろいろあるんです。今回は、岩手県工業技術センターの研究員として働く佐々木駿さんにインタビュー。研究を通して県内の企業とどう関わっているのか、詳しいお話を伺いました。
岩手県工業技術センターでは、製造業を中心とした県内企業に向けてさまざまな技術支援を行っています。1873(明治6)年に「岩手県勧業試験所」として創立し、現在は約50名の研究員が在籍。電子関係やIoT、産業デザインのほか、食品に関する取り組みなどを行っています。
ここで活躍している研究員は、県内企業から寄せられるさまざまな困りごとに対して専門知識をもとにサポート。素形材プロセス技術部で働く佐々木さんは、主に数値シミュレーションを活用した業務を行っています。数値シミュレーションとは、パソコンのソフトを使って特定の現象を擬似実験すること。これにより試作品を作る回数の削減や、完成までの期間を短縮するなど企業のコストダウンに貢献できます。
以前から自動車に興味があり、なかでもエンジンが好きだという佐々木さん。岩手で過ごした大学時代は工学部で学び、燃焼について研究していました。その後、他県の自動車メーカーに就職し、夢を叶えてエンジンの設計を担当。シミュレーションをして形状を決め、実際に図面を描くこともしていました。
「自分がやりたいと思っていた仕事なのでやりがいもありましたが、時間が経つにつれて『この場所ではやり切った』という気持ちと、『地元の岩手で暮らしたい』という思いが強くなっていったんです」
やがて佐々木さんは、岩手へのUターンを決意。地元の仕事を探し始めた矢先、大学時代の先生から岩手県工業技術センターで研究員を募集していることを教えてもらいます。「受けるだけ受けてみようかな」と応募し、採用が決定。今から3年ほど前に、専門研究員として働き始めました。
「自動車メーカーにいた頃は車のエンジンが専門でしたが、センターでは地元企業から寄せられる相談に対応するのが基本です。例えば製造業の企業から『製品不良の原因を究明するため、金型の熱変形を解析してほしい』という依頼がある一方で、設備メーカーから『製作依頼された食品材料を混合する機械について、もっと効率を上げるにはどんな形状がいいか』などの相談もあり、幅広いジャンルに対応しています」
そうしたさまざまな相談に答えるべく、仕事場には材料力学や熱力学、流体力学など、さまざまな専門書がズラリと並んでいます。依頼される内容に合わせてシミュレーションに必要な計算式を調べたり、似た形の前例がないか確認したりするのだそう。
佐々木さんは、「シミュレーションの内容によって使うソフトが変わりますし、条件の付け方も違ってきます。参考書を調べながら、毎日勉強しているんです」と言って笑顔を浮かべます。
佐々木さんいわく、この仕事に向いているのは「論理的に物理現象を考えられる人」なのだそう。感覚的に間違いや違和感を抱くことは大切ですが、シミュレーションを深堀りするために必要なのは論理的な考え方。佐々木さんもその点に苦労しているそうで、「だからこそ勉強が大切」と語ります。
そんなシミュレーションを通して、企業をサポートする毎日。なかなか難しそうな仕事ですが、佐々木さんは「学びながら経験を重ねると、少しずつ自分にできることが増えていきます。小さくても達成感を得ることが、やりがいにつながっています」と、教えてくれました。
(取材時期:2024年9月)
岩手県工業技術センターに興味を持った学生さんにメッセージ!
技術的な専門性を生かして、技術相談や試験研究など多様な側面から岩手の企業を応援し、地域に貢献できることが工業技術センターの仕事の魅力です。UターンやIターンの職員も多く働いています。研究員の募集を行う際は、ホームページ等でお知らせいたします。また、当センターへの採用を希望する方を対象に、見学を受け付けております。詳しくは下記のリンク先をご覧ください。
https://www5.pref.iwate.jp/~kiri/news-detail.php?id=460
■地方独立行政法人岩手県工業技術センター
1873(明治6)年創立。「創るよろこび・地域貢献」を基本理念に掲げ、電子情報システム部と機能材料技術部、素形材プロセス技術部、DX推進特命部、産業デザイン部、醸造技術部、食品技術部の7部門に研究員を配置。県内企業の技術相談や依頼試験への対応、設備機器の貸し出しなどを行っています。
▶シゴトバクラシバいわてURL
https://www.shigotoba-iwate.com/kyujin/company/64000050023591