interview
2024/8/20 掲載
ジャジャーン!自慢プロダクト/06
普段よく目にするモノから、知る人ぞ知るスゴいモノまで、ものづくり王国・岩手には、おもしろいプロダクトがいろいろ!ここでは、メーカー自慢のプロダクトと、それにまつわる開発ストーリーをお届け。今回は岩手町に工場を構える、株式会社東光舎の理容・美容ハサミ「ジョーウェル」を紹介します。
みなさんは日本製理容・美容ハサミのトップシェアブランドの工場が岩手にあることを知っていますか?
その会社が、理容・美容ハサミ「ジョーウェル」をつくる、株式会社東光舎。
世界50カ国以上で愛用されている理容・美容ハサミブランドの誕生のきっかけと、製品の特徴を代表取締役の井上研司さんにお聞きしました!
東光舎さんが理容・美容ハサミを製造するようになったきっかけを教えてください。
東光舎の創業は、1917年。創業者は私の祖父で、当初は医療用のハサミを製造していました。理容・美容ハサミの製造を始めたのが1921年からです。
医療用ハサミの製造から事業がスタートしたんですね!
当時の医療用ハサミは、西洋から伝わったもので、刃の部分をすべて鋼でつくる「全鋼製」でつくられているのが特徴でした。
そのため、弊社の理容・美容ハサミも同じつくり方をしていたんですが、当時は全鋼製でハサミを製造しているところが国内にはなく、とても評判がよかったそうです。
東光舎さんの理容・美容ハサミは、日本だけでなく海外でも使われているとお聞きしました。
現在は国内と海外の販売の割合がちょうど半々になっています。海外ではヨーロッパを中心に、50カ国以上の国で使われているんです。
海外でも人気なのは、なぜでしょうか?
海外輸出を本格的にするようになったのは、1970年代。当時、イギリスのヘア・アーティスト、ヴィダル・サスーン氏が今のヘアカットの基本ともされている「サスーンカット」を開発して、その技術を美容学校で教えていたそうです。
サスーンカットは、小回りの効く短いハサミで丁寧にカットするのが特徴なんですが、当時日本でその基準に合うハサミを製造していたのは、医療用ハサミのノウハウを活用して、精密な作業ができる小型の理容・美容ハサミを製造していた弊社だけでした。
そこで、日本からイギリスに勉強しに行く美容師がうちのハサミを持っていって使い、それを見た周囲の人から評判を得て、海外からの注文が増えるようになりました。
東光舎さんのハサミの高い品質が海外でも認められたんですね!
海外で販売が本格化したことをきっかけに、それまでのブランド名であった「ニハトリ印」を理容用に、美容用を「ジョーウェル」に変更しました(後にジョーウェルに統合)。名前の由来は、私たちの苗字である井上で、ジョーが「上」、英語で井戸を意味するウェル(well)が「井」を表しています。
ジョーウェルの特徴を教えてください。
理容・美容のカット方法は、その時代ごとに変化していくので、ハサミもその変化に対応できるように意識して製造しています。なので、細かな仕様は年代ごとに異なっているんですが、創業当初から見た目はシンプルな製品が多いですね。また、他社の製品と比べて、硬度が高いのと、かみ合わせが特徴的だと思います。
硬度の高さと独自のかみ合わせは、カットにどんな影響を与えるんですか?
ハサミは、包丁やナイフのように一枚の刃ではなく、二枚の刃を合わせることで、カットしますよね。なので、髪と接触する二枚の刃の内側の形がとても重要なんです。
ただ刃を鋭くすればよく切れるわけではなく、2枚の刃が重なるときに、ほどよい隙間があってきれいな曲線になっていると、切れ味のあるいいハサミになります。
しかし、切れ味はあくまでも「味」なので、理容師さんや美容師さんによって、相性があるんです。当社のものは、その中でも硬度の高さが、独自の切れ味をつくっていて、それを気に入ってくださった多くの方に使っていただいています。
シルエットやにわとりのロゴマークなど見た目もかわいい「ジョーウェル」は、その性能も抜群。創業から100年以上、ハサミに向き合い、使い手を意識した製品づくりを続けてきたからこそ、世界各国の人に愛されていることが、よく伝わってくるお話でした。
東光舎に興味を持った学生さんにメッセージ!
色々なことに好奇心をもって挑戦して下さい。成功しても、失敗しても得るものは大きいです。始めから何でもうまく出来る人はいません。挫けずに頑張り続けることが大切だと思います。
(株式会社東光舎/代表取締役 井上研司)
■株式会社東光舎
1917年創業の理容・美容ハサミの専門メーカー。オリジナルブランドの「ジョーウェル」は世界50カ国以上で愛用されています。岩手工場は、理容・美容ハサミ専用の工場としては、日本最大級。開発・研究部門を設置し、ハサミの基礎研究から新製品の開発、製造までを一貫して行っています。