interview
2024/5/13 掲載
あつまれ!熱血技術者/03
ものづくりに魅せられ、自分の仕事に心血を注ぐ技術者たち。彼らは、どんなことにこだわり、どうやって課題をクリアしていくのか?ものづくりの世界で凌ぎを削る、熱き技術者たちに迫るこのコーナー。今回は、盛岡市にある株式会社岩手村田製作所の細川翔平さんの登場です。
無色透明で美しく輝く、水晶。占いなどに使う水晶玉をイメージする人も多いと思いますが、実はこれ、電子部品の材料としても使われているんです。
水晶を使用した電子部品を「水晶デバイス」と呼びますが、これは電子機器にはなくてはならないもの。水晶には「圧電現象」という特性があり、他の素材よりも高い周波数を安定して発することができる優れた素材。利用範囲も幅広く、スマートフォンやパソコン、自動車、衛星通信など、さまざまな電子製品に使われています。
この水晶デバイスの素となるのが「人工水晶」なのですが、水晶の育成から完成品まで一貫生産しているのが、岩手村田製作所です。
「自分の頭の中で考えたものを、形にできるっておもしろいですよね」と話すのは、盛岡製造課の細川翔平さん(37)。
携帯よりもパソコンをねだって、プログラムを書き始めたり、産業技術短期大学校の時はロボットを作って東北大会で優勝したり、少年の頃からものづくりが大好き。
今でも、ふいに浮かんだひらめきを即座に書き留められるよう、常にノートを持ち歩き、四六時中、頭の片隅でものづくりのことを考えているといいます。
そんな細川さんの仕事は、生産技術部門の「改善係」。水晶デバイスの検査を行う機械設備の立ち上げや、製造工程の改良などに携わり、チームリーダーとしてメンバーを率いています。
近年は、電子製品の進化に伴い、水晶デバイスも小型化と高性能化が進んでいます。しかし、形状が小さくなればなるほど機械加工の精度を一定に保つのが難しく、ばらつきが生まれてしまうのだとか。
「これを安定して加工できるように、生産ラインと設計の両方の見直しや細かな改善を繰り返します。この作業に終わりはなくて、もっとうまくできるんじゃないか、もっと効率よくできるんじゃないかと、日々、試行錯誤の繰り返し。ラインが稼働した後も、改善と探求がずっと続いていくんです」と、細川さん。
品質の安定性を維持しつつも、コスト、人員、スピード、生産量など、あらゆる条件をクリアできるベストな答えを見つけていくのが、細川さんたち技術者の仕事。そのプロセスは多くの困難を伴うものですが、同時にものづくりの醍醐味でもあるといいます。
「製造現場で問題が発生すれば、10パターン以上は解決策を考えます。とにかくたくさん考えて、ほとんどがハズレだったりするんですけど、その中からたった1つの正解を見つけ出す。それが楽しいんですよね」
こうした時に役立つのが、これまでの部署で身につけてきた知識と技術。細川さんの場合は、製品検査、開発設計、生産技術の3つのセクションでの経験に加え、製造現場の状況分析などを総合的にインプットしながら、いくつものパターンを考え、シミュレーションしていきます。
しかも、岩手村田製作所では、何か問題が発生すれば、担当者だけが対応にあたるのではなく、その問題に関わる全ての社員が集まって、解決策を探していく。個々のスキルを結集し、チーム一丸となって仕事に取り組む環境があるといいます。
「前に先輩に言われたんです。若い奴は、知識はあるけど知恵がないって。ものづくりは、これまでやってきた仕事の掛け算なんです。いろんな部署で身につけ、深めた知識を、どんなものにどう組み合わせるかを考えるのが、技術者の知恵。真逆のものを結びつけて、新しいものが生まれることだってありますから」
細川さんは今、製造現場のデータを収集・分析することで、生産効率の向上につなげるDX化の準備に取り掛かっています。
新たな仕事に対しても、これまでと向き合い方は変わりません。もっと良くするためには、どうするべきか。もっといい方法はないだろうか。そこに改善の余地がある限り、細川さんのあくなき探求は続いていきます。
(取材時期:2023年12月)
岩手村田製作所に興味を持った学生さんにメッセージ!
岩手村田製作所は、電子部品を中心に独自の製品を供給し、文化の発展に貢献することを目指す会社です。まさに電子部品と同じように、一人一人の力を繋げて、世界を変えるような大きな力を一緒に生み出していきましょう!
■株式会社岩手村田製作所
東京電波株式会社を前身として、2013年に株式会社村田製作所のグループ会社となり、2020年に商号を「株式会社岩手村田製作所」に変更。盛岡市に本社を置き、久慈工場、群馬工場、大森事業所の3拠点を構え、人工水晶の育成から水晶振動子や水晶発振器などの水晶デバイスの製造まで一貫生産を行っています。