interview
2023/12/28 掲載
世界に推したい企業/04
「福祉=支援」という文脈で語られがちな福祉業界に、新たなビジネスモデルで挑む企業があります。アートを軸に、障害者に対する偏見やイメージを変えていこうとする、株式会社ヘラルボニー。岩手と東京の2つの拠点で活動する、彼らの挑戦について伺いました。
・「障害」のイメージを変容する
・「福祉×アート」で、福祉を起点に文化を創造
・モットーは『はじめの一歩はいつも岩手から』
2023年1月、あるポスターが盛岡駅に掲出されました。そこに書かれていたのは「鳥肌が立つ、確定申告がある。」というキャッチコピー。目にしたことがある人もいるのではないでしょうか。
これは、ヘラルボニーの契約作家が、収益を得て確定申告ができるようになったエピソードを取り上げ、社会に起こりつつある変化を伝えたものでした。
ヘラルボニーは現在、全国40拠点の福祉施設と約150名以上の作家とライセンス契約を結び、データ化したアート作品をさまざまなモノ・コト・バショに転用することで、その一部を使用料として作家に還元しています。
こうした新しいビジネスモデルをはじめ、ヘラルボニーのすべての事業に貫かれているのは、「作家ファースト」という姿勢。何よりも作家たちが生きにくい世界を少しでも変えていきたい、という強い想いが根底にあるそうです。
「作家さんごと施設ごとに、社員が担当として付いています。コミュニケーションを重ねながら仕事を進めますので信頼関係が築けますし、社員自身が作家さんのファンになる。だから、作家さんが望まない形で世に出したり、作品価値を落とすようなことはしませんし、どんな場合でも必ず作家さんに許諾をとってから進めています」と話すのは、岩手事業部の田村渓一郎さん(23)。
支援するのではなく、対等なパートナーとして、一緒に新たなビジネスモデルをつくっていく。むしろ、我々は作家たちから「支援される側」にある。
それがヘラルボニーと作家たちの関係性です。
設立以来、次々と社会に新しいインパクトを与え続けているヘラルボニーですが、これからの展開をどう描いているのでしょう?
この10月、岩手本社に「岩手事業部」という新しい部門が誕生しました。これは、岩手という土地に100年続く新しい価値を根づかせたいという思いから。ヘラルボニーの思想を体現する「福祉×アート」を、観光に、交通に、教育に、まち全体へと広げていくことで、「岩手から異彩を」世界に放ちたいとビジョンを描きます。
すでに、JR釜石線のラッピング列車や岩手県北バスのラッピングバス、全国植樹祭の衣装プロデュース、岩手県内150以上の個人やお店にアートポスターを掲示してもらうプロジェクトなど、新たな試みが始まっています。
「新潟といったらスノーピーク、岩手といったらヘラルボニーというように、地域のアイコンになれたらいい。ヘラルボニーの思想をまちづくりに生かすことで、誰にでも優しい岩手とか、あらゆる個性を尊重し合う岩手とか、岩手ならではの世界観をつくっていけるんじゃないかと思っています」と、田村さんはワクワクしています。
地方から、岩手から、異彩を放つ。そのビジネスモデルを日本や世界に展開していくことで、「障害」のイメージを変え、80億人の異彩がありのままに生きる社会の実現を目指して、ヘラルボニーの挑戦はまだまだ続きます。
(取材時期:2023年10月)
ヘラルボニーに興味をもった学生さんにメッセージ!
私たちが求めている仲間は、一過性の数週間を過ごす関係ではありません。ヘラルボニーという会社に共鳴し、時間をかけて、苦楽をともにする、そんな方と出逢いたい。そう考えています。新しい仲間との出会い、刺激的な日々をメンバー一同、心から楽しみにしています。
株式会社ヘラルボニー社員一同
■株式会社ヘラルボニー
福祉施設に在籍する知的障害のある作家とライセンス契約を結び、福祉を起点に新しい文化の創造を目指す企業として、2018年に設立。ライフスタイルブランド「HERALBONY」や他企業との共創による商品開発、まちやホテルの空間プロデュースなど、多岐にわたる事業を展開しています。
▶︎企業URL
https://www.heralbony.jp/